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第17話 拒絶反応(3)

 真斗が碧へ送ろうと持ってきていたのは、全て彼女が真斗へプレゼントしたものだったのだ。  泣き喚きながら碧を悪し様に罵る彼女に、碧は何とか事実をわかってもらえるよう話をしたが、彼女の言によると、真斗は男性しか愛せないから女性とは結婚できない、とも言ったらしく、その最たる理由として碧の存在を上げたようだった。  水商売だろうと何だろうと、客である以上、差別はしない。それが碧の接客スタイルだった。  しかし、結果として真斗をつけ上がらせ、店に迷惑をかけることになってしまった。店長まで出てきて、騒ぎによりほかのお客様にも迷惑をかける事態となったことを重く受け止めた碧は、一時期、辞職も考えた。だが、真斗の一方的な執着であることは明白だったことから、碧は二週間ほど休職扱いになり、真斗は『mori』を出禁になった。  休職扱いを言い渡されたその日、ちょうど『mori』を訪ねてきた真斗と鉢合わせした。碧が、もう施術はできない旨を伝えると、真斗は最後に握手を求めてきた。  そして言った。 「あんた手だけじゃなくて心も冷たいんだな」  今までありがとさん、と言われ、真斗とはそれきり、一度も逢っていない。  利用されたのだと悟った碧は、酷い気持ちのまま休職期間に入った。そして、休みが明けてしばらくして、六本木店へ引き抜かれる形での移動を告げられた。 「今でも時々、その時のことを夢に見る。一応、店側は、彼の一方的な執着だとわかってくれて、お咎めなしだったけれど、あんな扱いを、僕が彼にさせたのかも知れない、と思うと、……時々、しんどい」 「碧……」 「そういう理由で、武彦が僕の手を嫌がらないことが嬉しかった。武彦が悪いわけじゃないんだ。僕の方に落ち度があるだけで。暗い話になってごめん。でも、だからなおさら、今は……」 「碧」  人と関わるのが怖いと思うようになったのは、その出来事からだった。もしかすると無意識のうちに、碧が彼をエスカレートさせる原因をつくったのかもしれない。接客スタイルを見直さなければならない、と思い、それでも芯の部分はなかなか変えられなくて、未だに苦しんでいる。

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