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第21話 プレミアチケット(2)

 でも、白鳥相手には、さじ加減の必要がない。それがどれほど気楽で嬉しいことか、いい表せないほど碧は白鳥に感謝していた。  施術が終わると、白鳥が身だしなみを整えて出てくるのを待ち、碧は会計を処理した。 「こちらが会員カードになります。次回のご予約はどうなさいますか?」 「うん。来週の水曜日の同じ時間にお願いします」 「かしこまりました。次回のご来店時にポイントが満了となりますので、一回分の施術をサービスさせていただきます」  紫檀のカウンター越しに対応すると、白鳥の上着の内ポケットから何か細い紙切れのようなものが落ちた。 「あっ、白鳥さま……!」 「ん?」  気づかず背を向けた白鳥を、慌てて呼び止めると同時に、碧は紙切れを拾い上げ、一瞬、止まった。 「えっ……?」  拾い上げてみて、思わず声を上げた。『グッドマン』のプレミアチケットだったからだ。 「これ……あ、失礼いたしました。こちら、落とされたようです。どうぞ」 「ああ、それか。都合がつかなくなってしまったから、誰かに譲ろうと思ってたんだが。確かきみ、『グッドマン』好きだったよね?」  白鳥はそこで初めて、碧に人の悪い笑みを浮かべて見せた。 「一枚だけど、よければもらってくれる?」 「はっ……え、いえっ、あのっ、それは……」 「行くならあげるよ。どうせ予定が入ってしまって、行けなくなったからね」 「で、でも貴重なものでは……」 「まあ、うん。でも貰いものだから」 「あ、いえ、あの……っ、や、やっぱり結構です。実は僕も試写会に申し込んでいて、外れてしまったのでつい反応してしまったのですが……申し訳ありません」 「どうして謝るの? じゃ、ちょうど良かったじゃないか」  一瞬、碧の反応に面食らったかに見えた白鳥は、少年のように声を上げて笑った。

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