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20歳の暗い夏5-1
時刻は20:00。
月夜に照らされた大学の屋上にリチャード先生から通信機で呼び出された。
「ブレイン、早く来い。緊急出動だ」
「カートが見つかったんですか?」
「ああ、見つかった。ヴォジャノーイやシェイプシフターの動きも思ってたより早い。直ぐに向かう」
「向かうってどうやって?」
「コレだ」
リチャード先生が手を翳すと目の前にジェット機が姿を表した。
「私の愛車だ」
いつもはリチャード先生得意の幻影で愛車を隠しているらしい。
「愛車ってこれジェット機ですよね?操縦出来るんですか?」
「知らないのか?今時のジェットは音声認識とオートパイロットだ」
ゆっくりとジェットの扉が開く。2人で乗り込むと椅子が四つ並んでいた。
僕とリチャード先生は前方に座る。
「フェニックスは?」
「先に出たから、もうそろそろ現場に到着しているだろ」
「メイとスティールの他に本部からワシントンaチームも応援に来る。ランデブーポイントで落ち合う。
ヴォジャノーイはアメリカ本土でもシェイプシフターに召集をかけているらしい。それだけカートに執着してるんだろう。敵は思っていたよりも数が多いぞ。急ごう」
「座標セット、自動操縦オン」
リチャード先生が言うとジェットが起動した。
「シートベルトしとけ」
「は、はい」
ジェット機に乗るのは初めてだ。上昇する時、少しだけ身体がふわふわ浮く様な感じがした。
「カートはどこに居たんですか?無事ですか?」
「アニストンだ。カルホーン空港近くにあるJazz Bar feroceというBarに住み込みで働いていた。本当にカートは優秀な生徒だよ。一切の足跡を隠す見事な逃走だった。WIAのエージェントが何日も探したが見つけられなかったんだ。
でも、今回は突然ヴォジャノーイに居場所がバレた。カートがそんなヘマをするか?」
「僕のフィアンセはそんなヘマしないでしょうね」
もしかして、カートはわざとヴォジャノーイに見つけさせて誘き出した?
「まあ、そのお陰で我々もカートを見つけ出せた。必ず救出するぞ」
「はい」
やっと!やっと!君に会える。
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