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20歳の暗い夏4-4

恋人のフリを始めて数日。ディーンとの時間が増えた。 僕の仕事中はJazz Bar feroceのカウンターでお酒を飲んでいる。 お客さんに口説かれると、今じゃアーティよりディーンの方が止めに入ってくれる。 いつもふざけてるけど、本当は優しい人。 ディーンの彼氏役にも慣れて来た。 でも、それもそろそろ終わり。 サムからの情報でヴォジャノーイがアメリカに入国したらしいと教えてもらった。 もし、、、 ヴォジャノーイを倒す事が出来たら、、、 ブレインの元へ戻っていいのかな? 僕から突き放したのに。 都合が良すぎる? それとも事情を説明したら分かってもらえる? 僕は自分からブレインを突き放したのに、、、 ブレインに突き放されるのが怖い。 ブレインに拒絶されるのが怖い。 ディーンとサムに知り合うまで、この逃亡生活はもっと続いて行くものだと思っていた。 それが、もしかしたら終わるかもしれないと分かるとブレインの恋人に戻りたいと思っている。 僕は酷い男だ。 ブレインの為に別れたつもりだったけど、結局は自分の為だった? 自分の都合でブレインを突き放したり戻りたがったり。 こんな酷い男を、もう一度愛してくれるのだろうか? 「どうした?なんか落ち込んでないか?」 仕事が終わって2階へ上がると、すぐにアーティから心配された。 「僕、顔に出やすいよね。心配させてごめん」 前にライアンにも感情がダダ漏れだって言われた。 優しいアーティ。こんなに心配してくれる人を僕は騙している。 「ごめんね、アーティ」 「何を謝ってる?」 「わかんない」 感情がグチャグチャで。 「ほら、おいで」 アーティが両手を広げる。 僕はハグしてアーティの分厚い胸板に顔を埋めた。 「話したければ聞くし、話したくなければ何も聞かない」 アーティはただ、僕に寄り添ってくれる。 それにどれだけ救われているか。 僕はアーティに出会わなければ、どうなっていたか分からない。 住む場所も仕事も、何より安心できる居場所を作ってくれた人だ。 何も聞かずに側に居てくれる。 今僕が安心して眠れるのはアーティの腕の中。

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