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第46話 悪戯の代償 其の三★

「……りゅ……も……や、だっ……! ぁ……んっ……」   甘い声が唇から溢れる。  滑りのある熱い舌が円を描くように、内腿を這う。  昨夜に付けられた唇痕を、更に鮮やかに色付けるようにきつく吸われれば、内腿には綺麗な華が咲いた。そんな咲かせた華を散らし、潰すような刻薄さで、竜紅人(りゅこうと)は唇痕を甘噛みする。  内腿の柔らかさを堪能するように、歯でそして牙で皮膚の表面を引っ掻くように噛まれたと思いきや、牙痕を残すほど強く噛まれて、香彩(かさい)の艶やかな高い声が上がった。  恥ずかしさのあまり目を背けていた香彩だったが、ふと視界に入った内腿の紅い物が気になって、無意識に下を向いた。  内腿の白い肌に浮かび上がる、淫靡な幾つもの紅い唇痕。  昨夜の名残だ。場所を変え、角度を変え、強く吸われた感触を覚えていた。  だが実際目にして見ると、こんな場所に唇痕を付けられていたのだと、そして今も付けているのだと、現実味を帯びる気がして、それが恥ずかしくて堪らない。  くすりと香彩の股座で、竜紅人(りゅこうと)が笑う。  自身の顔を跨ぐ体勢を取らせる竜紅人は、香彩の真下で、香彩と視線を合わせながら、これ見よがしと長い舌を見せて、内腿を(ねぶ)ってくる。 「……んっ……ぁ、りゅ……!」  再びそんなところで視線が合うなど思っても見なかった香彩は、顔に恥じらいの色を溢れさせた。  想い人の顔を跨いで愛撫される背徳感と恥ずかしさ、それでも快楽を拾ってしまう己の身体の浅ましさに堪らないものを感じる。香彩は手の甲で自身の口を塞ぎながら、竜紅人から再び視線を反らし、僅かな抵抗とばかりに腰を浮かせた。  ほんの少しだけ竜紅人の、太腿を押さえ付ける力が緩む。  先程よりも密着感を失い、生まれた隙間を好都合だとでも思ったのだろうか。  舌は柔らかい内腿から、陽物の裏筋を通ってふぐりを一舐めし、会陰部分を行き来する。  やがて高い鼻梁で、押し込むように会陰を刺激しながら、舌は後蕾に辿り着いた。   「やあぁぁ……っ!んっ! だめっ……あ……んんっ」  香彩の唇から悲鳴の様な艶声が零れた。  固く閉じてしまった蕾を開かせようと、(ぬめ)りのある熱い舌が襞を這う。窄まった蕾の皺へ粘液を擦り込むかのように舌を蠢かせ、たまに臀部へ軽く歯を立てては、また蕾を潤し(ほぐす)すようにねっとりと舐め上げた。 「りゅ……やぁっ! んんっあ……んっ!だめっ……」  そうやって暫し蕾を潤した後、竜紅人は、潤った窄まりの中へと、舌先を突き入れた。 「──や、あぁぁぁ、んっ……!」  強引に捩じ込まれ、浅い場所で舐め回されながら蠢く舌の感触に、蕾と胎内はかつての開きと柔らかさを思い出したのか、竜紅人の舌を貪欲に奥へ奥へと引き込むように蠕動する。  一度舌を引き出し、粘液でたっぷり潤された窄まりへ、淫らな水音がわざと立つように、中指を捩じ込まれる。舌よりも固く長い指が、くちゅ、と音を立てて入り込んでくる。  それでも昨夜の柔軟さには届かないと気付いたのか、竜紅人は指が入ったまままの蕾に、再び唇を寄せた。 「あ、んっ…んんっあ……」  固く締まった蕾を指と唇で嬲り始めた竜紅人は、突き入れた指の隙間へ舌を捩じ込んで、香彩の内部へ粘液を注ぎ込む。 「あ、んっ…はっ、はっあ……んんっ」  堪らないのは香彩だった。  催淫を伴う真竜の唾液を、直接胎内(なか)に注ぎ込まれて、あまりの熱さに尾骶がずくりと鈍く痛む。挿入ってくる舌の熱さに喘ぎ、とろっと中に入れられる唾液の滑りに、香彩は思わず腕を伸ばして届いた部屋の白壁を掻きむしる。 「……っ、りゅう……っ!」  思い詰めた余裕のない口調で、香彩が竜紅人の名前を呼ぶが、竜紅人からの返事はない。(いら)えの変わりとばかりに、襞を丁寧にこれでもかと舐められて、香彩の身体は徐々に白壁へと体重を寄せた。  そうして更に生まれた香彩の下半身と竜紅人の顔との隙間を、竜紅人は敢えて引き寄せようとはしなかった。  見えてしまったその隙間。  綺麗な竜紅人の顔の上に、臀部を突き出すような格好になっていることに気付いて、香彩はいやいやと頭を振る。  だが身体はもう与えられる快感に従順になり、逃げようとはしなかった。  逃げたがっているのは、心だけだ。  それもまた竜紅人の手管によって、変えられてしまうのだと、香彩はよく知っていたのだ。  ぐちゅ、と淫らな水音を立てながら指が出し入れされ、突き入れられた舌先が出口付近の内壁を這い回る。それらの愛撫によって香彩へ(もたら)されるのは、明らかな快感だった。 「ん、んう…はっ、あぁ…あ、んっ…」  突き入れられた指を、幾度も引き抜いては捩じ込み、内部を掻き回すように蠢かして、締った蕾を傷付けないよう少しずつ解されてていく。  そうやって少し締まりに余裕ができると、突き入れる指の本数が二本、やがて三本へと増やされた。

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