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第163話 成人の儀 其の二十九★       ──花蕾責め──

   ひくりと震えた花蕾が、いままさに甘やかな花弁を開こうとしていた。これから味わうことになる深い深い法悦を思い、香彩(かさい)は目を閉じる。その眦を、ひとすじこぼれた情慾の涙が、頬を伝って、紫雨(むらさめ)の胸の上に落ちた。  それが本当に情慾を伴う涙なのか、それとも色んな喪失を嘆く無意識の涙なのか、香彩自身も分からない。  だだ分かることは、涙に気付いた紫雨の、眦に感じた口唇が、酷く優しかったことだった。 「ん……っ」  紫雨の口唇は宥めるように、上気したすべらかな香彩の頬に口唇を落とす。どこか安心したかのように、僅かに表情を緩める香彩は知らなかった。そんな顔ひとつとってさえ、紫雨の庇護欲と嗜虐心を掻き立てるのだと。  紫雨は掌に吐き出された、白濁とした凝りを弄ぶように、その触感を味わうかのように、指先で捏ねていた。くちゃりと淫靡な音を立てながら、再び花蕾の襞に丁寧にまあるく塗り付けていく。時折、後蕾を指先で突付き、柔らかさを確かめながら、ほんの少し指を入れては出し、襞から柔らかくなるようにと円を描いて触れる。  香彩は次第に荒くなる熱い息を、紫雨の胸に溢しながら、切なく啼いていた。  紫雨はもうすぐ知ることになる。  硬く閉ざしているのは、花蕾だけだということを。  入念に襞を愛撫し、後蕾が柔らかくなったことを指先の感触で知った紫雨が、ゆっくりと指の一本を後孔に入れる。 「……、ん」  唐突に背筋を駆け上った尾骶の甘い疼きに、覚えず身悶えて香彩は甘い喉声を立てた。  胎内(なか)はすでに熱く緩み、付け根まで入ってきた紫雨の指を食い締める。  とろりと後蕾から溢れ出す蜜の感触に、香彩は艶やかに啼きながら、身を震わせた。  穿つ紫雨の手指にまで滴り落ちる、滑りの熱さを、彼は知ってしまったのか。  喉を鳴らして紫雨は、くつりと笑った。 「……こうも淫靡に濡れるとは。真竜に発情されられた名残とはいえ……淫奔だな。かさい」 「あ……、あぁ…っ!」  軽く胎内(なか)を引っ掻くような動きをしてから、紫雨が指を引き抜き始めた。無意識の内に香彩の胎内(なか)の媚肉が追い縋るようにして、指を絡め取ろうと卑猥に蠕動する。その刺激にすら感じてしまって、香彩は高く啼いた。  やがて花蕾の窄まりが、二本の指を感じ取る。焦らすように何度か襞をまあるく触れられた後、後蕾を割り、ゆっくりと入り込んだ。あまり慣らしてもいないというのに、骨張った長い指は、たやすく根元まで埋まる。  柔らかい、と。  耳元で囁かれる官能的な低い声に、香彩は堪らず再び二本の指を食い締めた。

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