165 / 409

第165話 成人の儀 其の三十一★       ──胎内の極致──

「あ……あ……」  香彩(かさい)は思わず顔を上げた。  ぎらついた紫雨(むらさめ)の、更に熱くて深い欲情と、嫉妬を孕ませた深翠の双眸にぶつかる。それは骨に(こた)えるほどの、鋭い視線だった。  香彩は目をさ迷わせながら、紫雨から視線を逸らす。彼の白衣を握る手が、震える。その全てが紫雨に肯定の意味を表していた。  誤魔化しようがないと、四本目の指が襞を広げて挿入(はい)ってくる気配に戦慄きながらも、香彩は思った。  紫雨はすでに気付いているはずだ。  腰の括れに残されている、蒼竜の前肢の痕を。  何より胎内(なか)の柔らかさを。  それもそのはずだ。  もう昨日になってしまったが、早朝の黎明の刻から出仕の仕度の刻まで、胎内(なか)を蒼竜で慣らすかのように、ずっと繋がったままだったのだから。  香彩は切なく息を乱しながらも、こくりと頷く。  紫雨に知られ、認めてしまったことに、背徳感と罪悪感の入り交じったような何とも言えない気持ちになった。  だがそんな思いも、胎内(なか)を暴く指の動きに、次第に何も考えられなくなる。  胎内(なか)を引っ掻くだけだった紫雨の指先の動きが、おもむろに快楽の宿る箇所を探り始めたのだ。 「あ……」   快感を掘り起こすことなど、相手には造作もないことなのだと香彩に思わせるほど、紫雨の指は的確に、腹側にある香彩の弱いところを探し当て、責め立てる。 「──やぁっ、そこ……っあはっ……あぁ…っ、あんんっ…はぁ…」  無遠慮な指先に掻き混ぜられるたび、やわらかく蕩けていく自分の心とからだを思い知らされる。  やがて緩く浅い抜き挿しが始まると、香彩は無意識の内に腰を突き出して、もっとと強請るような反応をした。  紫雨の、くつりと喉奥で笑う声が聞こえてくる。 「蒼竜よりも()くしてやる。だから……」  啼け、かさい、と。    耳元に吹き込まれる官能的な低い声に、香彩は理性の糸がぷつりと切れる音を、頭のどこかで聞いた気がした。 「んんっ……はぁ、っ、んっ…そこだめぇ……っ、あ、あ……」   くちゅ、と水音を立てて内部を擦られる度に突き抜けるような快感が走り抜ける。香彩は紫雨の衣着を掴んで、その波をやり過ごそうとした。だが快楽に囚われた香彩の身体は、甘く呻くような啼き声を上げ続け、腰は淫らに揺らぎ震える。  尾骶が灼けるように熱かった。  身と心を焦がす深い悦楽に成す術もなく、紫雨の指の動きに合わせて、香彩は身体を跳ね上げる。  紫雨が愉しげに微笑(わら)い、指の動きを速めた。容赦なく腹側の凝りを突かれ責め立てられて、強すぎる快感と羞恥に香彩は首を振って、情慾の涙を零し、やがて射精を伴わない絶頂に押し上げられていく。 「あぁぁ……や…あぁ…っ、なかで……っ、いっちゃ……う……っ!」  射精感よりも比べ物にならない程の、深い深い法悦が焦らすように込み上がってくる。  紫雨より与えられた幾つもの快感を、この身体はしっかりと覚えていた。積み重ねられた淫逸な手管に香彩は、やがて射精を伴わない甘く辛い絶頂感で内部が大きく波打った。 「──っ、あぁぁぁぁッ……!!」  幾度も幾度も奥から押し寄せる、深い悦楽の波。  香彩は、びくりびくりと大きく身体を震わせる。  やがて紫雨の逞しい胸に身を任せ、ゆっくりと崩れ落ちていったのだ。

ともだちにシェアしよう!