「──……っ、あぁぁァァァっ……!!」 　大きすぎる快楽を伴う圧迫感を、決して痛みの伴わない二本の楔が胎内(なか)に入っていく肉感を、一体何に喩えればいいのか香彩(かさい)には分からなかった。 　ただただ、苦し気な、だがどこかで愉悦に満ちた艶声を、香彩は上げることしか出来なかった。 　秘蕾を引き千切れそうな程に押し広げ、肉筒の中を進入してくる硬くて熱い二本の肉塊に、苦しいながらもその先にある、この上ない悦楽を期待して、無意識に腰が揺れる。 「……お前も、そう急くな。かさい」 　背後から降って来たのは、欲に掠れた紫雨(むらさめ)の官能的な低い声だ。宥めるように、腰の括れから臀の丸みまでの身体の線を軽く触れられて、香彩は身を震わせる。 「あぁ……っ」 「……っ、すっげぇ締め付けだなぁ……かさい」　 　耳輪を食まれながら熱い吐息と共に、そう耳に吹き込むのは竜紅人(りゅこうと)だ。 「……やぁ…っ、そ、んなの……っ！」 　知らない。 　艶声と荒く甘い吐息の合間に、香彩はそう言葉を紡ぐ。 　知らない。 　怖い。 　もっと、もっとと。 　求めてしまいそうになる自分が、とても怖い。 　怖いというのに、身体は貪欲に悦びを求める。腰を揺らめかせ、艶かしくもくねらせて、二本の雄を食い締める。 　だが香彩の身体がどんなに強請っても、竜紅人もそして紫雨もまた、香彩の胎内(なか)を剛直で穿っただけで、決して動こうとはしなかった。 「あ……あ……」 　そのあまりの焦れったさに、香彩は熱い二本の猛りの形を胎内(なか)ではっきりと感じ取りながら、我慢できないとばかりに腰を動かし始める。 　香彩が動く度に、ぐちゅりと卑猥な水音が鳴るが、それすらも耳を犯す興奮材料だった。 　そんな香彩の拙い腰の動きを見ていた紫雨が、面白そうにくつくつと喉奥で笑う。 「後で……それこそ嫌というほど、たっぷりとくれてやる。だから、急くな……かさい」 　腰の括れの線を楽しんでいた紫雨の左手が、香彩の腰の動きを静止させるかのように、尾骶の上に置かれた。伝わってくる熱い手の体温の中に術力の波動を感じ取って、香彩は甘い息を吐きながらその動きを止める。 「……そう、いい子だ」 　紫雨のその言葉だけで、ぞくりと粟立つものが背筋を駆け上がり、無意識の内に胎内(なか)の剛直を媚肉がしゃぶりつく。 　息を詰める竜紅人と紫雨の気配を感じながらも、香彩はふわりと漂ってきた匂いに驚いて、肩越しに紫雨を見た。 　それは酒香の混ざった血臭だった。 　目に入ってきた光景に、香彩は身体を捻らせて紫雨を凝視する。 「あ……」 　体勢を少し変えたことによって、胎内(なか)の二本の剛直が擦れるように、香彩の弱いところを刺激した。だが軽く喘ぎ、熱く荒い吐息が色付いた唇から洩れることになっても、香彩は紫雨から目を離すことが出来なかった。 　彼の左手は、香彩の尾骶の辺りを押さえたままだ。 　では右手は。 　彼自身の口元にあった、その右手は。 　自身で皮膚を噛み切ったのか。 　その指から手首まで赫い血が、つつ、と流れていた。