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第182話 成人の儀 其の四十八★       ──祝杯──

 その深い法悦を身体の奥底で受け止めるかのように、香彩(かさい)は上半身を落とす。自然と上がる下半身や(いざらい)が、もっとと強請(ねだ)っているかのようだ。  果実の華を包む温かさが堪らない。  そしてそんなところを舐められ、口腔内に収められることの倒錯さが、香彩を更なる快楽の渦に陥れる。  卑猥な水音を立てて、竜紅人(りゅこうと)が果実の華を口から離した。荒く息を吐きながら、香彩の身体の下へと滑り込む。  竜紅人は舌舐めずりをしながら、手でぐいっと口を拭っていた。馳走を食べた後の様な、いかにも堪能したと言いたげな様子に、香彩は顔に朱を走らせる。まさに真竜にとって自分は馳走なのだろうと、快楽に染まった頭で香彩はそんなことを思う。  そんな竜紅人の様子に、香彩の後方へと回った紫雨(むらさめ)が、くつくつと喉奥で笑うのだ。 「ほぉう? お前が愛でていたのはこの華か。竜紅人」 「……っ」  紫雨の声に、そして紫雨に果実の華に触れられたという事実に、香彩はびくりと身体を震わせる。 「背徳の果実、といったところか。実に見事に淫らに熟したものよ。是非とも祝杯を上げねばな」  祝杯、という言葉に香彩は甘く荒い息を吐きながら、紫雨の方を肩越しに見ようとした。  だがそれは香彩の首筋に唇をよせてきた、竜紅人によって妨げられる。 「あ……んっ」  まるで紫雨によって上書きされた唇痕を、更に塗り替えるかのように、竜紅人が香彩の首筋に食らいついた。  吸われた所を更に吸われながら、軽く牙の当たる感触が狂おしくて堪らない。  香彩が自身の首筋に気を取られていた、まさに刹那。 「──っっ、あ、あぁぁぁ……っっ!!」  まさにそれは祝杯、だった。  ふわりと香るのは神澪酒の酒香。  爵酒器を傾け、極上の酒を口に含んだ紫雨は、禁断の果実の華に酒を塗り付けるようにしながら、華を舐める。  やがて見つけた果実の蕾の部分に二本の指が差し入れられると、紫雨は再び酒を口に含んだ。指によって軽く開かれた果実の蕾に飲ませるかのように、少しずつ、少しずつ神澪酒を送り込まれる。 「……んんっやぁ……っ、熱い……っっ! あつい……っっ……!」  その深い法悦に香彩は、悶絶しながら身を震わせた。  竜紅人の神気と唾液を感じていたその場所に直接含まれた神澪酒は、強力な媚薬となって果実の華の粘膜を刺激する。 「──熱い、か。これからこの比ではない熱いものが四体、お前の中に入る。気を失うなよ」  果実の華の蕾に挿入(いれ)られていた紫雨の二本の指が、ぐっと後蕾の果実を押して元の場所へと収められる。 「んんっ……ん」  やがて指が抜かれたが、後蕾はそれすらも惜しいのだとばかりに、ひくついた。  閉じては開く後蕾の華を嫌でも実感してしまって、香彩は堪らず竜紅人の衣着を、ぎゅっと掴む。  香彩が四つん這いの体勢のまま、二人に華を愛でられていたのは、ほんの僅かな時間だ。だが香彩にとってそれは、拷問に等しい時間だった。  一度覚えてしまった二本の剛直が生み出す快楽を、もう忘れることが出来ない。神気と神澪酒が齎す相乗効果は、香彩から理性というものをひたすら奪っていく。  香彩の下に入り込んだ竜紅人は、紫雨が華を愛で終わったことを知るや否や、よほど我慢していたのか、直ぐ様その肉棒を香彩の後蕾に宛てがった。  後背位の体勢をとった紫雨もまた、そんなに急くな竜紅人と喉奥で笑い、その剛直を香彩の後蕾に宛てがう。  そして見事に咲いた後蕾の華を散らす様にして、同時に二本の剛直が挿入(はい)ってきたのだ。

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