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第188話 成人の儀 其の五十四★        ──熱楔の震え──  

   紫雨(むらさめ)の言葉に竜紅人(りゅこうと)が喉奥で、くつりと笑った。 「おっさんこそ、抜かずの四神の数だけだろう? 枯れてるのが術力だけならいいけどな」 「──誰に物を言っている? 竜紅人よ」  戯れのような二人の会話を、香彩(かさい)は快楽に犯された頭のどこかで聞いていた。  その話し方、熱い息遣い、そして僅かな腰の動きの違いに、来る、と思った。  求めていたものが、ようやく来ると思った。 「……ようやくだ、かさい。……たっぷりと、くれてやる」 「あっ……」  耳に吹き込まれる紫雨の、初めて聞く余裕のない雄の声色に、ぞくぞくとした粟立つものが背筋を駆け上がり、脳をも湿らせ犯すようだった。  やがてその極太の二本の熱楔は、今までの静けさが嘘のように、激しく抽挿を始めたのだ。 「──……っ、ああぁぁぁっ……!」  後孔を押し広げながら、二本の剛直は香彩の胎内(なか)で擦れ合い、腹側の凝りを結腸の窄まりを、そして更に奥の蜜壺を、交互に卑猥に責め立てる。  後ろから下から突き上げられる度に、圧倒的な質量を持った熱の肉塊が胎内(なか)を、そして香彩自身を蕩けさせていく。  くれてやる、と紫雨が言った。  その言葉に、熱い飛沫が腹の最奥の蜜壺に注ぎ込まれ、熱く灼かれる淫猥な快感を想像してしまって、香彩の胎内(なか)はこれでもかと熱楔を締め上げる。  しかもただの熱ではない。  玄武の宿った熱だ。  そして紫雨を補助する形で、竜紅人の濃厚な神気の凝りもまた、肚奥で感じることになるという。  それらを受けた自分が一体どうなってしまうのか、香彩は想像が出来なかった。 「……や、ぁぁぁっ……!」  想像が出来なかったというのに、やがて襲い来る狂おしい法悦を、淫らな淫蕩さに浸る自分を夢想する。  耐えられない。  耐えられそうにない。  今がとても気持ちよすぎて。  いつの間にか動けるようになった腰を、熱を求めて(くね)らせながらも、その悦楽の恐ろしさに、無意識の内に紫雨と竜紅人の剛楔から逃げようとする。 「香彩……」 「……かさい」  逃げるな、と。  両耳に吹き込まれる、欲に掠れた声。  胎内(なか)を穿ち激しく抽挿されながらも、紫雨には耳輪を、竜紅人には耳裏を舐められ軽く()まれる。その刺激と二人の欲声と荒い息遣いという官能的な熱は、身体だけでなく脳の奥にまで広がり、甘く痺れていくようだった。  がくりと、香彩自身を支えていていた腕の力が抜ける。竜紅人の胸に縋り付くような体勢になっても、その激しい抽挿は止まることはなかった。 「ああっ、はぁっ、はぁ……んっ……だめ……ぇ! んんっ…あ…」  すっかり甘く甘く色付いた香彩の淫声と、三人の肌を打つ音、胎内(なか)を掻き回される卑猥な水音と、そして紫雨と竜紅人の荒い息遣いだけが、この潔斎の場を占めている。  時折、先程までの激しさが嘘のように、紫雨がゆっくりと腰を回す。それに倣うように竜紅人もまた抽挿の速さを落とす。  それは結腸の蜜壺に咥え込んだ二本の剛直が、射精を求めて震え、更に太く硬い肉質へと変化している様を、香彩に敢えて教えようと、そして追い込もうとしているかのようだった。  もうすぐだ、と。

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