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第305話 白き世界の幽囚 其の七 ★

「──っ!」  香彩(かさい)は無意識の内に身体を震わせた。その震えが一体何を意味しているのか、自分でも分からなかった。   思えば竜紅人(りゅこうと)人形(ひとがた)のまま、自由に竜尾や竜翼を顕現させることが出来る。また感情が制御出来なくて、角を出してしまった事も過去にはあった。  だから不思議ではないのだ。  竜紅人の熱楔が、蒼竜と同じように二本顕現させることが出来たとしても。  だがそれが一体何を意味するのか。  これから何が行われようとしているのか。 「あ……」  まるでいつも一緒にいた竜紅人が、未知なるものになってしまったかのような怖れと、それを上回る僥冀(ぎょうき)に、どうしても震えが止まらない。 「……そう怖がるな、って言っても無理だよな」  香彩の様子を見た竜紅人が、香彩の鼻梁に、そして頬に、触れるだけの優しい接吻(くちづけ)を落とす。 「……お前の身体が発情期の俺に合わせて変化してるって分かって、我慢が出来なかった。いまはまだお前に二本挿入(いれ)ねぇから安心しろよ」  お誂え向きにも、お前は二人いることだしな。  香彩の頬に触れる竜紅人の手付きはひどく優しかった。だが言ってることは、あまりにも正反対だ。  いまはまだ。  竜紅人のその言葉に、香彩は思わず顔を赤らめた。  いまはまだということは、いずれそうするつもりがあるということだ。思わず想像をしてしまって、考えるだけでも、ぞくぞくとしたものが背筋を駆け上がる。  この気持ちもきっと、竜紅人には知られてしまっているのだろう。彼はいま、思念体だ。そして自分は彼の御手付き(もの)だ。彼には自分が心内で強く『希う』思念が伝わってしまう。 「……っ、お前なぁ……」  グルッ、と竜紅人は竜の唸りを見せてから、呆れたような大きなため息をつく。  だがその瞳は情欲に灼けついた獰猛さで、どう食らってやろうかと揺れている。  そんな色欲を露わにしたまま、竜紅人は喉奥でくつりと笑った。 「『本質』であるお前に聞いても隠すだろうから、『心の魔妖』のお前に聞く」  しゅるりと音を立てて、『香彩』の淫口から竜尾の先端が動く。若茎の内側を擦りながらゆっくりと引き抜かれていく感覚に、香彩はあられもなく艶声を上げた。  とぷ、と白濁の混ざった蜜が若茎から溢れ、つつと白い世界の床に当たる場所に滴り落ちていく。もしもここが寝所ならば、その敷栲(しきたえ)はいくつもの卑猥な染みが出来ていただろう。  蜜で濡れたままの竜尾の先端が『香彩』の顎をくいっと持ち上げた。 「『心の魔妖』よ。俺の望むものは何だと思う?」  それは刹那の出来事だった。  竜紅人の声を聞いた『香彩』は、余っていた長い手足を使い、器用にも拘束しながら香彩の体勢をひっくり返したのだ。  香彩と『香彩』が向かい合い、肌を合わせるようなそんな体勢に。    

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