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「じゃあ僕、今日からあの人にめちゃくちゃ優しく接するよ」  にんまりと笑って告げると、ハラちゃんは心底ゲンナリしたような表情で言った。 「ホントお前、性格悪いよな。  ‥‥‥西園寺さんが、ちょっとだけ気の毒になるわ」 ***  何故西園寺さんみたいな完璧超人が、僕のような普通の男にストーカー紛いの行動を繰り返すようになったかというと。  ‥‥‥話はおよそ、1ヶ月前に遡る。  新規オープンする事になった、『にこにこ弁当』の第54号店。  家から近かった上、時給も魅力的だったから、僕はアルバイト募集の告知を見てすぐに応募した。  すると運良く採用されたから、オープニング前から研修に入る事になった。  元々手先が器用だったし、愛想も悪くないため、厨房と接客その両方を臨機応変に任される事となった。    そして迎えた、オープン当日。  西園寺さんはパリッとしたスーツに身を包み、場違いなまでにキラキラまばゆいオーラを撒き散らしながら店舗に現れた。  だけどその日彼は体調があまり優れなかったらしく、終始笑顔ではあったけれど顔色が少しだけ悪く思えた。  他の人達はそれにまるで気付いていなかったけれど、僕は父親が病弱なためこういった事に慣れていたから、ペットボトル入りのミネラルウォーターをこっそり手渡した。  それからもし具合が悪ければどうぞと椅子を差し出すと、彼は驚いた様子で瞳を見開き、それから満面の笑みを浮かべてありがとうと答えた。

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