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僕にはその境界線を越える勇気もなければ、同性である彼を好きだと認める事も出来そうになかった。
……つまり結局のところ、西園寺さんをストーカー扱いする事で、彼の真摯な思いと向き合う義務から避けているだけなんだ。
「アハハ!なんで一人で、そんなシリアスな雰囲気を醸し出してるの?
なんかハラちゃん、勘違いしてるよ。
僕は彼の事なんて好きじゃないし、今後も絶対に好きになったりもしないから」
そうやって冗談にしようとした僕の笑顔はぎこちなく、頼りないモノだったかもしれない。
だけどやっぱり絶対に、認めるなんて真似は出来ない。
……僕のこの苛立ちも、悲しみも、すべてが西園寺さんへの恋情から来ているだなんて。
***
「こんばんは、陸斗くん。
今日も俺に、家まで送らせて貰っても良いかな?
もちろん買い物に寄りたいって言うなら、それにも付き合うし」
昨日同様、勤務時間が終わりを迎え、外に出た絶妙なタイミングで声を掛けられた。
相手は、言うまでもない。
異世界の住人であり僕のストーカー、西園寺さんだ。
この若さだから忘れそうになるけれど、西園寺さんは一応は企業のお偉いさんなはず。
そしてこのにこにこ弁当までは、彼の働く西園寺プレシャスグループの本社ビルは、車で片道およそ一時間ほど掛かるはずだ。
この間こっそりスマホで調べて、心底ゲンナリしたから間違いない。
なのに朝のお迎えに始まり、昼の顔見せ、さらにはこんな時間に僕の事を送るためだけに現れるとか。
‥‥‥もしかしてこの人は、役員なんて名ばかりで、ただのお飾りに過ぎないのだろうか。
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