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***  買い物を終え、自宅まで送り届けて貰う車中にて。 「ねぇねぇ、陸斗くん。  この間の約束、覚えてる?」    そう聞かれたのだけれど、その約束とやらの内容がピンと来ず、首を傾げた。  すると西園寺さんは残念そうにちょっと眉尻を下げ、拗ねたような口調で告げた。 「やっぱり、忘れてる‥‥‥。  今度俺にも君の手料理を、振る舞ってくれるって約束したじゃない」  あぁ……そう言えば、そんな話をしたかもしれない。  だけど彼の家を訪れるのは、正直少し‥‥‥いや、かなり抵抗がある。  最近うっかり忘れそうになるが、この男は紛れもないストーカーなのだ。  それならば自宅に招き、家族の目がある所で料理をする方がまだマシかもしれない。  そうなればいくら変態の西園寺さんでも、さすがに僕に対して妙な真似なんて出来ないだろうし。  そう考えたから、渋々ではあったけれどその旨提案したら、西園寺さんは満面の笑みを浮かべてそれを受け入れた。 「じゃあ来週の、土曜日でも良いかな?  確実に予定が空けられそうなのは、その日くらいだから」  ちょうどそのタイミングで、車は僕の自宅前に到着した。 「良いですよ、では来週の土曜で。  だけどひとつだけ、条件があります。  朝と夜の送迎は、もう止めて下さい。  ……あなたの体が、心配なんです」  最後の一言は、ちょっと余計だったかもしれない。  だけどこれくらい言わないと、きっとこの人は、頑として譲らないとも思われる。  駄目押しとばかり、車を降りた僕を見送るために開けられた窓から小指を差し込み、指切りを求めた。

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