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「うん、そうだね」
僕の告白 の意味に気付かなかったのか、彼はにこにこと嬉しそうに、月を見上げたまま無邪気に笑った。
そのためこのままでは伝わらないと思ったから頬に手を添えてちょっと強引に下を向かせ、もう一方の手のひらで彼の焦げ茶色をした大きな瞳を隠してから唇に口付けた。
西園寺さんの大きな体が、ビクッと震える。
クスリと笑って手を離し、ブランコから立ち上がった。
「えっと‥‥‥。
陸斗くん、今のは‥‥‥」
困惑したような、西園寺さんの声。
「何がです?
さて‥‥‥そろそろ、帰りましょうか?
なんだか急に、寒くなって来ました。
僕、風邪を引いちゃいそうです」
微笑んで、何事も無かったように告げた。
普通であればこんなので、僕のした事を誤魔化すなんて真似は出来ないだろう。
だけどそこは、僕至上主義の変態ストーカー西園寺さん。
案の定彼は、大層慌てた様子で言った。
「ハッ、それは大変だ!
陸斗くんに風邪なんか引かせたら、陸斗くんのご両親‥‥‥ひいては俺の未来の両親に、申し訳が立たない!
っていうか大切な君が、熱なんか出したら!」
‥‥‥誰が西園寺さんの、未来の両親だよ。
だけどもう突っ込むのもバカバカしかったから、そのまま車に向かい、無言でスタスタと歩き始めた。
すると西園寺さんは走り出し、僕を追い越して、助手席側のドアを開けてくれた。
家の前まで送り届けて貰い、別れ際、僕は笑顔で言った。
「ありがとうございました、西園寺さん。
思いの外、楽しかったです。
クリスマスも、楽しみにしていますね」
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