124 / 139
その男、やっぱりストーカーにつき②
「ではそろそろ、僕は一旦失礼します。家族の夕飯を、用意しないといけませんから」
にっこりとほほ笑んでの、帰宅宣言。
すると西園寺さんは、まるで捨てられた子犬みたいに瞳を潤ませ、僕の顔をじっと見つめた。
「......一旦と、僕言いましたよね? あなたの分も用意して、あとで戻りますから」
その言葉を聞き、パッと輝く表情。
……年下の僕の言動に、振り回され過ぎだろう。
なのにちょっと呆れながらも、やっぱりかわいいなだなんて思ってしまう甘い僕。
「分かった、待ってる。大好きだよ、陸斗くん......」
顎先に指を添えられ、上を向かされた。
軽く唇に、触れるだけのキス。
それが少しだけ物足りなく感じてしまい、離された指と唇が寂しくて、今度は自分から口付けた。
そんな僕を見下ろしたまま、クスリと笑う西園寺さん。
ぬるりと口内に侵入してきた、彼の舌。
最初の頃は恥ずかしくてなかなか慣れなかったけれど、もう僕は知ってしまっている。
このキスが、とっても気持ちいいってことを。
そしてこの先にある行為が、さらに僕を気持ちよくしてくれるってことも。
「あんまりかわいい顔、しないでよ。帰したく、なくなるから」
困ったように耳元で囁かれ、ようやく我にかえった。
「ちなみにベッドも新調して、寝室にもう運び込んで貰ってるから。……今日は、泊まっていけるよね?」
やっぱりこの人は、ずるい。
断れないのを知りながら、最後の選択はいつも僕に委ねるのだから。
だけど僕だって、西園寺さんがずっと忙しかったせいで、諸々不足しているのだ。
ちょっとだけ悔しかったけれど素直にこくんと頷くと、彼は満足そうにニッと笑った。
ともだちにシェアしよう!

