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その男、やっぱりストーカーにつき②

「ではそろそろ、僕は一旦失礼します。家族の夕飯を、用意しないといけませんから」  にっこりとほほ笑んでの、帰宅宣言。  すると西園寺さんは、まるで捨てられた子犬みたいに瞳を潤ませ、僕の顔をじっと見つめた。 「......一旦と、僕言いましたよね? あなたの分も用意して、あとで戻りますから」    その言葉を聞き、パッと輝く表情。  ……年下の僕の言動に、振り回され過ぎだろう。  なのにちょっと呆れながらも、やっぱりかわいいなだなんて思ってしまう甘い僕。   「分かった、待ってる。大好きだよ、陸斗くん......」  顎先に指を添えられ、上を向かされた。  軽く唇に、触れるだけのキス。  それが少しだけ物足りなく感じてしまい、離された指と唇が寂しくて、今度は自分から口付けた。  そんな僕を見下ろしたまま、クスリと笑う西園寺さん。  ぬるりと口内に侵入してきた、彼の舌。  最初の頃は恥ずかしくてなかなか慣れなかったけれど、もう僕は知ってしまっている。  このキスが、とっても気持ちいいってことを。  そしてこの先にある行為が、さらに僕を気持ちよくしてくれるってことも。 「あんまりかわいい顔、しないでよ。帰したく、なくなるから」  困ったように耳元で囁かれ、ようやく我にかえった。 「ちなみにベッドも新調して、寝室にもう運び込んで貰ってるから。……今日は、泊まっていけるよね?」  やっぱりこの人は、ずるい。  断れないのを知りながら、最後の選択はいつも僕に委ねるのだから。  だけど僕だって、西園寺さんがずっと忙しかったせいで、諸々不足しているのだ。  ちょっとだけ悔しかったけれど素直にこくんと頷くと、彼は満足そうにニッと笑った。

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