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その男、やっぱりストーカーにつき①

「西園寺さん。素直に言えば、今なら許してあげますよ? いったいどこに、仕掛けてあるんですか!」  にっこりと、ほほ笑みながら聞いた。  すると彼はぐっと唇を噛み締め、僕から視線をそらした。  この、変態ストーカーめ! やっぱり仕掛けてるんじゃないか。 「西園寺さぁん? ちゃんと答えないで後から出てきたら、二度とここには来ませんからね。5秒以内に、白状して下さい。5、4、3……」  スタートした、カウントダウン。  ぎょっとした様子で目を見開き、彼は慌てて大きな声で答えた。 「寝室と、脱衣所。それから、陸斗くん用に用意した個室と、キッチンです!!」  ......思っていた以上に、数が多い。  それにドン引きしていたら、彼は涙目で訴えた。 「ホントに、それで全部だよ? 最初はトイレにも仕掛けようかなって思ったけど、さすがにそれが見付かったら、君に嫌われると思って……」 「当たり前です !ホント、あなたって人は。気持ちが悪過ぎる......」  想像の斜め上をいく答えにゾッとして、自然と体が震えた。   「ごめん、陸斗くん。でも君と一緒に過ごせる時間が、これまでよりずっと増えると思ったら、嬉しくて……」  しょんぼりと、うなだれる西園寺さん。  なんだよ? その表情。可愛いな。  ……やはり無駄に、顔がよい。  しかしこんなのは、絶対に許されざる行為である。  だから無理矢理顔を引き締めて、わざと冷たい声色を使い告げた。 「もしまたこんな物を仕掛けたら、次は絶対に許してあげませんからね?」  フゥ、と深呼吸をして、取り付けられていた盗聴器たちをすべて回収した。

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