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ふたりで迎える朝③
ホッとしたように綻ぶ、彼の顔。
甘やかしてはいけないと思ったばかりだと言うのに、つい吹き出してしまったのは僕のミスだ。
「とはいえ何でもかんでも新調しようとするのは、あまり良い事だとは思えません。
なので僕の私物も、少しずつ持ち込んでも良いですか?」
生活の半分を西園寺さんの家で過ごすのであれば、この確認はやはり必要だろう。
諾の返事が得られるのは分かっていたが、なぁなぁにはしたくなかった。
「もちろん。何なら、全部うちに運ん……」
「お断りします!週の半分と、言ったでしょう?
家の手伝いもあるし、ここにばかり入り浸ってもいられませんから」
食い気味に、答えてやった。
ちょっと残念そうに、唇を尖らせる西園寺さん。
この表情には弱いが、折れるワケにはいかない。
あぁ、もう!仕方がない、苦肉の策だ。
「でも、西園寺さん。
僕だって、嬉しいんですよ?
……これからはあなたがこの家で過ごす日は、毎日会えるんだなって思うと」
じっと彼の顔を見上げ、告げた。
最初は言いくるめてやろうと考えての事だったけれど、これは紛れもない本音でもあったから、自然と顔が火照るのを感じた。
すると西園寺さんが僕を、強く抱き寄せた。
でももう時刻は夕刻を過ぎていたから僕よりもずっと大きな彼の体を押し退け、にっこりと微笑んで言った。
「では今日のところは、そろそろ失礼します。
後で夕飯だけお届けに上がりますが、玄関先で失礼しますね」
彼に背を向けて、無言のまま靴を履く僕。
だけどこれからの生活を思い、自然と口角が上がってしまっていたのは、西園寺さんには内緒だ。
「一旦帰ります。
西園寺さん、また後で!」
くるりと再び彼の方を向き、背伸びをして軽く唇に口付けた。
すると西園寺さんはデレデレとまたしても鼻の下を伸ばし、性懲りもなく僕を抱き締めようとしたからそれは華麗に避けて、笑顔で手を振った。
【…Fin】
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