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ふたりで迎える朝②

「西園寺さんの提案してくれたように、週の半分程度をこちらで過ごす事にさせて頂きます。  ただし僕が早番の前日は、妙な真似はしないで下さい」  一枚の白紙にその旨念書を書かせ、押印させた。  叱られているというのに、デレデレと嬉しそうに鼻の下を伸ばす西園寺さん。  ……怒られ過ぎたせいで、ますますおかしくなってしまったのだろうか?  ちょっと不安になり、じっと彼の無駄に整った顔面を凝視する。  すると西園寺さんは、頬を薔薇色に染めて告げた。 「……なんか、まるで婚姻届を書いてるみたいだね」 「違います。  本当に。……ほんっとうに、気持ちが悪い人ですね」  心底ゲンナリして、死んだ魚のような目を彼に対してつい向けてしまったけれど、僕はまったく悪くないと思う。 ***  結局その日は休みだった事もあり、そのままずるずると1日彼と共に過ごす事になった。  とはいえこれは、シフトをまたしても勝手に把握していたと思われる彼の、策略に起因するものと思われる。  そのため素直に予定が合って良かったですねなんて言えないから、なんとも複雑な気持ちになってしまうワケだけれど。  勝手に揃えられていた、お揃いのパジャマや食器類。  さらには歯ブラシや、僕専用のお泊まりセットみたいなモノまでいつの間にか買い揃えられているのは、今に始まった事じゃない。  ……だけど。 「出来れば僕も、ふたりで使う物を一緒に選びたかったな。  ……これからは、ここにいる時間も長くなるんだし」  ボソッと呟いた、ひとりごと。  しかしそれをしっかりちゃっかり聞いていたらしき彼は、真顔で告げた。 「確かに、そうだね。  ごめんね、陸斗くん。  ……一度全部処分して、買い直そうか?」 「そういう話じゃ、ありません!  今使っているのが悪くなったり、壊れた時で構いませんから。  ご存知だとは、思いますが……。  僕ね、物を大切に出来ない人、大っ嫌いなんで」  見る間に青ざめる、彼の顔。  それを見て諸々馬鹿らしくなり、つい吹き出した。

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