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ふたりで迎える朝①

 珍しく先に目覚めたので、隣で眠る彼の横顔をそっと盗み見る。  僕のとは異なり、柔らかな茶色の癖っ毛。  長い睫毛で、縁取られた瞳。  今はまだ閉じられたままだから、ちょっと寂しいだなんて感じてしまうぐらい、西園寺さんと出逢って僕は甘えたになってしまった。  最初に会った時は、別世界の人だと思った。  そして毎日のようにストーキングされるようになってからは、本気でヤバいヤツに好かれてしまったと、戦慄した。  なのに今では、彼なしの生活が考えられなくなっているとか……。  知り合ってからの出来事を振り返り、つい吹き出した。  すると彼の大きな、少しだけ垂れ気味のチョコレート色をした瞳が、ゆっくり開いた。 「おはようございます、西園寺さん。  朝食の準備を、しようかとも思ったんですが……動けません」  にっこり微笑み、暗に|ヤり過ぎ《・・・・》だと非難する。  すると彼は叱られた大型犬みたいに眉尻を下げて、情けない声でごめんと謝罪の言葉を口にした。  別に本気で怒ってもいなかったのだけれど、ここで甘やかすのはきっと良くない。  この人、すぐに調子に乗るし。  それに隣に越してきた彼の家には今後、度々お邪魔する事になるだろう。  となれば、|こういう事《・・・・・》をする機会もきっと、今まで以上に増えるに違いない。  ……だってこれからは、帰れなくなるからという言い訳が、もう使えなくなってしまうから。  ポンコツなはずなのに、こういう悪知恵だけはよく働くものだと、本当に呆れてしまう。  でもそれだけ愛されているのだと分かってもいるから、本気でぶちギレて、別れるなどという結論には至らないワケだが。

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