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第12話
また、イく……っ、
イ…………、え……
ずる……っと抜かれた指に、長岡を見上げると目が意地悪そうに細められていた。
わざとだ。
イきそうになったから指を抜いたんだ。
「冷えてきたろ。
車行くぞ」
「…………は、い」
身体を離し自身のアウターの前を握る。
アナルがジクジクして、下っ腹が変だ。
ここでだって良い。
ケツを出したって寒いのは平気だ。
それほどまでに長岡を求めている。
なのに、その本人はそれを前に待てを出す。
確かにここはリスクが高い。
先程のように人が通る可能性だってある。
このトイレより、車の方が見通しも良くにおいだって長岡のもので満ちていて良い。
分かっている。
分かっているから頷いたんだ。
「そんな顔して外歩くのか?
いくら短い距離でも妬くぞ」
「正宗さんも、妬くんですか…?」
「普通に妬くだろ。
俺の遥登なんだからな」
手をとられ、指輪を目の前に晒された。
それを見詰める恋人の視線はやわらかさも孕んでいる。
長岡は、サディスティックなだけではない。
意地が悪い事もするし、恥ずかしい事もさせる。
けれど、それは長岡の欲だけではない。
性欲の捌け口にされている訳じゃない。
視線や言葉、態度、仕草。
すべてから愛情が伝わってくる。
心からの深いもの。
それが沼なんだ。
「正宗さんも……俺の、です」
「なら、俺の独占欲もみせてやる」
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