41 / 696
第41話
「三条です。
お迎えに来ました」
「あ、綾登くんのお兄さん。
お帰りなさい」
おかえりの挨拶になんと返したら良いのか分からず、こんにちはと日和ってしまう。
実習になったら日和っていられないとは思うのだが、日中はオンライン授業でお迎えがはじめての外出だ。
そんなお迎えで、おかえりと言ってもらえるのはなんだか申し訳ない。
それでも、そんな気持ちを隠してくれる顔で頭を下げた。
「綾登くーん、お兄さんお迎えに来たよ」
「あ!はうー!」
「にちゃ!」
「こぉにちは!」
わらわらと集まる小さな集団には慣れた。
大きくて細い男に集まる小さな頭。
末弟とはぼ1歳の年の差がある早生まれの子達はとても小さい。
学校に入学すると気にならない差が、ここではこんなに大きい。
子供の成長とはとてもすごい。
ぐんぐん大きなって、すくすく育つ。
「こんにちは」
三条はしゃがみ込むと、グータッチをしていく。
これは恒例だ。
最初はぱっちん─ハイタッチ─が良いと言われたのだが、こっちにしようととグータッチ。
長岡が贔屓にしている球団の監督のようにゴチンっとクリームパンみたいな手をぶつけてくる。
すごく可愛い。
「遥登くん、人気ね。
ね、保育士にならない?
これだけ人気なら天職になるかも」
「いえ、俺は…」
「ナンパしちゃ駄目ですよ。
学校の先生になるんですから、ね」
「はい」
保育士さんもとても良い人達だ。
綾登も楽しそうに過ごしているのが、本人の話から伝わってくる。
自分にも楽しかった記憶がある同じ保育園。
こんな時でも楽しんで欲しい。
こんな時だからこそ、目一杯楽しむ必要がある。
「綾登、お片付けしておいで。
優登も迎えに行こう」
「ん!」
ともだちにシェアしよう!