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第41話

「三条です。 お迎えに来ました」 「あ、綾登くんのお兄さん。 お帰りなさい」 おかえりの挨拶になんと返したら良いのか分からず、こんにちはと日和ってしまう。 実習になったら日和っていられないとは思うのだが、日中はオンライン授業でお迎えがはじめての外出だ。 そんなお迎えで、おかえりと言ってもらえるのはなんだか申し訳ない。 それでも、そんな気持ちを隠してくれる顔で頭を下げた。 「綾登くーん、お兄さんお迎えに来たよ」 「あ!はうー!」 「にちゃ!」 「こぉにちは!」 わらわらと集まる小さな集団には慣れた。 大きくて細い男に集まる小さな頭。 末弟とはぼ1歳の年の差がある早生まれの子達はとても小さい。 学校に入学すると気にならない差が、ここではこんなに大きい。 子供の成長とはとてもすごい。 ぐんぐん大きなって、すくすく育つ。 「こんにちは」 三条はしゃがみ込むと、グータッチをしていく。 これは恒例だ。 最初はぱっちん─ハイタッチ─が良いと言われたのだが、こっちにしようととグータッチ。 長岡が贔屓にしている球団の監督のようにゴチンっとクリームパンみたいな手をぶつけてくる。 すごく可愛い。 「遥登くん、人気ね。 ね、保育士にならない? これだけ人気なら天職になるかも」 「いえ、俺は…」 「ナンパしちゃ駄目ですよ。 学校の先生になるんですから、ね」 「はい」 保育士さんもとても良い人達だ。 綾登も楽しそうに過ごしているのが、本人の話から伝わってくる。 自分にも楽しかった記憶がある同じ保育園。 こんな時でも楽しんで欲しい。 こんな時だからこそ、目一杯楽しむ必要がある。 「綾登、お片付けしておいで。 優登も迎えに行こう」 「ん!」

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