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第52話

「つうか、編入するって聞いた時ほんとに驚いたんだけど、なんで言ってくんなかったんだよ」 「いやぁ…。 正直、自信なくて」 短期大学へと入学した吉田は、本来ならこの春卒業し就職するはずだったのだが、勉強をし足りないと系列大学へと編入した。 一緒に短大に入学した未知子ちゃんは、卒業し無事保育士の夢を叶えた。 1番乗りの社会人は、大人びて見える。 先日、就職おめでとうといつもの5人でオンラインで飲み会をしたのだが楽しかった。 本当は会いたかったが、入社前に感染したら大変なのでオンライン。 そんな事にもすっかり慣れた。 「俺ら2000年生まれって、ミレニアムベビーとか呼ばれてたろ。 まぁ、俺は2001年だけどな。 けど、感染症が拡がってこんな小さな街だって注意報が流れるようになって、そうしたら今度は感染症が酷い世代だってまた勝手に名前が付いた。 ずっと、その世代で区別されんだよ。 まともに実習もしてねぇって」 「うん」 「上の世代だって、ゆとりだなんだの言われてるけど……勝手過ぎんだろ。 だから、勉強してすげぇ色々詰め込んでやろうって思ってさ。 けどさ、それって俺のエゴだなって思いしらされた」 昼飯のパンを見詰めながらなんて事のないように言う。 吉田は、誰かの為に心を磨り減らせるから心配だ。 「子供に笑ってて欲しいって思って勉強してきた。 けど、笑うにはまず安心ってベースがいるんだって気が付いた。 自宅待機だからこそ怯えている子供がいるってな。 見えてなかった。 同時に、俺はそれに目を向けていなかったなって反省もした。 俺が安心して生きてきたから、気が付けなかった」 そんな事はない。 それが普通だ。 そう言おうとして、三条はその言葉を飲み込んだ。 なら、傷付けられている子供達は普通ではないと線を引いてしまうことになるからだ。 区別は大切だ。 だけど、差別はいけない。 似ていて全く違うその2つ。 差をつくってはいけない。 「で、勉強しようって決めたんだけど、編入試験って難しいのな。 もう頭ぱんっぱん。 当時はなんか弱気になってたし、受かってから知らせようって。 悪いな。 秘密にしてた訳じゃねぇんだ。 三条だけ教えてねぇ訳じゃねぇから、泣くなよ」 「泣かねぇよ。 でも、受かって良かった」 「おう。 すっげぇ勉強したからな」 いつもの笑みにグーを差し出す。 ゴツッとお互いのそれがぶつかり、グータッチ。 「実際、保育の場に出てみるのも言いかなとは思ったんだ。 けど、俺が選びたかったから」 「んじゃ、今度こそお祝いさせろよ」 「おうおう。 頼むぜ」 まだ少し肌寒い中だが、まだまだ積もる話はある。

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