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第54話

手を洗う隣で、長岡はコーヒーを淹れてくれている。 香ばしいにおいにそちらを見ると目があった。 「どうした?」 「いえ…、良いにおいだなって」 「豆から淹れると、やべぇよな。 遥登が良いのくれたから、美味いの飲めてる。 ありがとな」 「俺も御馳走になってます。 いつも淹れてくれて、ありがとうございます」 「気に入ってくれたか」 「はいっ。 とっても」 コポコポと落ちる雫が貯まるのを見守りつつ、手を流し終えるとうがいをする。 清潔なタオルでそれらを拭い、1歩長岡に近付いた。 長岡は視線を隣にやり小さく笑うとまたお湯を落とす。 すると、三条はまた1歩近付いた。 「隣、来いよ」 「でも…」 「サービスすんぞ」 「サービスって…」 「ほら、ほら」 手招きされ肩と肩が触れ合う距離にまで近付くとすぐに腕が回ってきた。 腰を抱かれ大袈裟なくらい身体が跳ねてしまう。 「すげぇ跳ねたな」 「すみません…。 びっくりして……」 「敏感だもんな」 「違いますっ。 そんな……平気です」 「本当かよ」 とは言ってみたが、腰に触れる手が他の箇所をも撫でてきたらもっと身体が反応してしまうだろう。 敏感とかではなくて……その……、好きな人に触れられたらそうなるだろ。 「あの、サービスって、このえっちぃやつですか……」 「違げぇよ。 ほら、これ」 後方にある冷凍庫から取り出されたそれに、三条はキラキラと目を輝かせた。 「ハーゲンダーツのアイス」 「っ!」 「買い物してたらクーポン貰ったから買それでってきた。 期間限定のやつ。 食ったことあるか?」 「ないです! 本当に良いんですか」 「良いよ。 遥登と食おうと思って買ったんだから、一緒に食ってくれ」 あたたかなコーヒーと冷たいアイス。 最高の組み合わせに、三条はしっかりと頷いた。

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