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第55話

淹れたてのコーヒーにアイスクリーム。 最高の組み合わせだとご機嫌な顔を見せる三条は丁寧に手を合わせてから、コーヒーを啜った。 「すっかりそのまま飲めるようになったな」 「正宗さんがくれましたから。 でも、まだ甘い方が美味しいなって思いますよ」 「それでもだよ。 大人びたな」 三条のマグカップの中身は長岡と同じ甘くないコーヒー。 まだ、甘い方が美味しいと感じるが、苦いそれも好きだと思う。 頭の中で、甘くないコーヒーと恋人がイコールで結び付くから。 単純だ。 だけど、単純で良かった。 好きな物が増えれば、それだけしあわせが増える。 「アイスも食え。 あとで交換すっか」 「贅沢ですね!」 コーヒーであたためたスプーンでアイスを掬うと、ジワ…っとクリームが溶け美味そうだ。 それを、ぱくっと頬張ると口の中にしあわせが拡がる。 「んーま! 美味しいです!」 「そりゃ良かった。 こっちも美味いぞ」 「高い味がします」 「そういえば、遥登ってカリカリくんとか氷っぽの好きだよな」 「好きです。 でも、アイスクリームも好きですよ。 夏は喉が乾いちゃって氷っぽいのが多いですけど、カップのアイスも食べます」 乳脂肪分の多いアイスクリームは暑い日には口が乾いてしまう。 逆に乳脂肪分低いラクトアイスの方がさっぱりしているが、それでも氷菓の方がガリガリ食べられて好きかもしれない。 単純に、アイスクリームが学生のお財布に優しくないのであまり手が伸びないのも確かだが。 どちらかというと氷菓子はおやつで、アイスクリームはご褒美だ。 安くて量のある…と子供のような選び方をしている事に気が付いた。 ちょっと恥ずかしいかもしれない。 でも、経済力も違うし。 チラっと盗み見た長岡はやっぱり大人だ。 「また買っとくから食いに来い。 カリカリくんもな」 「ありがとうございます」 ゆっくりとアイスクリームを楽しみながらコーヒーを飲む。 暖かいと冷たい、甘いと苦い。 合わさると最高に美味しい。 それに、なんと言っても長岡が隣にいるんだ。 それだけで、胸がドキドキしてワクワクする。

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