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第56話

隣でご機嫌そうにアイスを食べる三条を見て、長岡は表情を緩めている。 学校では絶対に見せない特別な顔だ。 「やっぱ、ほんもんは良いな」 「アイスですか?」 「アイスじゃねぇよ。 遥登だよ」 手からスプーンが取られ、それが長岡のアイスを掬い口元へと差し出される。 「あーん」 「え、…あ、」 「照れんなよ。 もっとすげぇ事もしてんだろ」 「…っ!!」 「すげぇ事、したくなる」 口にしたアイスクリームはすぐに溶けた。 自分の体温が上がったのかと思うほど早く。 折角のアイスなのに後味しか分からない。 「美味い?」 「お、いしいです…」 「じゃあ、ほら。 おかわり」 「あ、でも……」 「アイスは一旦やめて、すげぇ事する?」 流された目の色気にドッドッと心臓が騒ぎだす。 “すげぇ事”とは、一体なんだろう。 長岡とは沢山すごい事をしてきた。 本当に沢山。 思い出すのも恥ずかしいあれやこれや。 だけど、どれも気持ち良かった……。 「……その…」 「なに想像してんだよ。 チョコの食い方? セックス終わった後の水の飲ませ方? それとも、セックス自体?」 勃、つ 色気がやばい。 普段はどこに隠してるんだ。 おかしいだろ。 こんな色気を隠して、学校で教鞭を振るっているんだぞ。 教職者なんて、信じられない顔をしている。 「………や、らしいの…そうぞ、しました」 「やっぱ若い子の創造力は逞しいな」 本当に勃ちそうだ。 どうしよう。

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