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第565話

多めに用意しておいた方が良いと長岡に言われ、その通りに用意したはずの飲み物もほぼ飲みきり、歩き慣れた道を歩く。 夕日の綺麗な町。 オレンジとピンクの混じった空に目を細めた。 あの日の色は、まだ目に焼き付いている。 きっとあの日が運命の日だったんだ。 すべての運命が動き出した日。 今日へと繋がっている道。 なにがきっかけになるかなんて誰にも分からない。 あのきっかけは自分と恋人だけの秘密だ。 「あ、今日も可愛いね。 元気だった?」 サクラの形をした耳の猫を見付け、三条はしゃがみ込んだ。 いつ見ても可愛い子だ。 三条の話すことが分かるのか、にゃっと小さく鳴き、目を閉じる。 「毎日暑いね。 水、飲んでる? あ、写真良い?」 なんだか緊張感がすっかりほどけてしまった。 いつものにこにこした三条の顔になる。 すっかり猫と話し込んでいると、手に持ったスマホが震えた。 『浮気?』 そのメッセージに慌てて立ち上がりキョロキョロと左右を見る。 けれど、人はいない。 なら、上だ。 目的の建物を見上げるとヒラヒラと手を振っている人がいる。 「バイバイ、またね」 パッと顔色がかわり、誰が見ても相手は好きな人だと分かる顔で駆け出した。

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