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第721話
長岡が帰宅すると、にこにこした顔の三条が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
今日は待ちに待った休日。
1日三条とゆっくりダラダラ過ごす日だ。
朝の7時から開店しているパン屋に行き、近くの薬局で少し買い物をするだけのはずが、なんだかんだで三条の方が先に部屋へと来てしまっていた。
事前に連絡をしていたので合鍵で入っていてくれたのは安心だ。
「悪い、遅くなった」
「いえ。
俺も今来たところです」
その言葉は嘘ではない。
三条は、マスクにキャップのままだ。
ということは、手洗いもまだなのだろう。
「それにしても、良いにおいです」
「見るか?
クロワッサンにメロンパン、惣菜パンもあるぞ」
「クリームパンもあります!
大好きです!」
「知ってる。
これは遥登の分だ。」
にっこにこになる顔。
この顔を食べられるのであれば、値引きされたパンだって極上だ。
だけど、焼き立て熱々のパンはまた至極。
コーヒーを淹れて、三条にとっては2回目の朝ご飯を食べるのも良い。
10時のおやつとしてヴィエノワズリーを食べたって良い。
どうする?と聞けば、非常に悩ましいとばかりの顔が返ってくる。
食べるのが大好きな三条には難しい問題だったらしい。
「ま、先に手ぇ洗うか。
で、コーヒー淹れるからその間に考えとけ」
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