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第722話
プレゼントしたコーヒメーカーはとても大切に使われている。
コポコポとお湯を落とす長岡も格好良く、手間はかかってしまうがプレゼントして良かったとつくづく思う。
そして、そんな恋人とプレゼントを見ていると胸の辺りがふわふわする。
きっと嬉しいんだ。
使ってくれていることも、大切にしてくれていることも、それを使うのが“当たり前”になった光景も。
「そんに待ちきれねぇ?」
「え?」
「嬉しそうな顔してる。
美味そうなにおいだもんな。
先に食っても良いぞ」
そんなに顔に出てしまっていたのか。
「冷めない内に食えよ」
「正宗さんとが良いです。
一緒に食べてください」
冷めたって2人で食べた方が美味しい。
1人で食べるなんて寂しい。
いつでも触れることの出来る距離にいるのに。
会える時くらいは、そうしていたい。
駄目ですか…?とばかりの顔をする三条に、長岡は手を伸ばす。
「ほんと…」
後ろ頭をポンポンと撫でられたかと思うと、今度はそのまま髪を片手間に弄りだした。
器用に片手でポットを持ったままだ。
ゆっくりとお湯を落としては液体が溜まるのを待つ。
ゆっくり、ゆっくり。
休日の時間の使い方だ。
「良いにおいです」
「この前美味いって言ってたやつ。
また買っといたんだよ。
やっぱり、豆からだと美味いよな。
俺でも味分かる」
「コーヒーは正宗さんの方が上級者じゃないですか。
俺は最近まで甘いのしか飲めませんでしたし」
「なんで飲めるようになったんだっけ」
ニヤニヤとした口元を隠すことなく、聴いてくる長岡。
そんなの知っているくせに。
自分の口から言わせたい辺り、本当にサディストだ。
「正宗さんがくれるからです」
「いつ?」
「……えっちの後」
「ははっ、さいっこう」
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