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第820話

「いただきます」 運転をしていては食べられないので、先に腹を満たす。 ふわふわのパンにたまごが良く合う。 最初に茹でたまごとマヨネーズを混ぜ合わせた人に感謝しかない。 更にそれをパンに挟んだら美味しいと思った人とは握手をしたい。 「で、提出物は出せた?」 「まぁ、それは出せた」 「誘われた?」 「うん。 誘われた」 教育採用試験には合格したが、配属が決まっていない。 だから、ここぞとばかりに粘られた。 本当に優登との約束を取り付けなければ、めんどくさいことになっていた。 けれど、少しの不安はある。 常勤になれるのか。 どこに配置されるのか。 上手くやっていけるのか。 そんな不安を考えれば、院は今の環境の続きだ。 そちらの方が楽なのかもしれない。 非常勤への不安だってある。 給与面だって、親に負担や心配をかけたくない。 けれど、諦めたくない。 俺の人生だから。 「俺の兄ちゃんだからなぁ。 欲しがるのはセンスが良い。 寧ろ、センスしかねぇな」 「なんだよそれ」 にっ、と笑う弟は、甘い菓子パンをパクッと頬張った。

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