848 / 984

第848話

長岡が箸を置く音がやけに大きく耳に届いた。 続けて三条も箸を置く。 「後片付けは後で俺がする」 「え、…はい」 イチャイチャ。 それがどんなことなのか自分には年頃の想像しか出来ない。 “そういう”イチャイチャ。 「遥登」 ソファに置かれたブランケットを片手にこちらへと近付いてきた恋人。 頭にブランケットを被せられドキドキが増す。 だって、頭にブランケットを被せられる時は、顔が近付く時だ。 恋人を見上げると、ゆっくりと抱き締められた。 「少しだけ触って良いか」 「……はい」 「激しくしねぇから。 帰りも送る」 「大丈夫です。 俺も、触られたいです、から…」 背中に回る腕に力が込められ、胸がくっ付く。 そして肩に顔を埋められた。 そろそろ学期末だ。 忙しいのだろう。 なのに、自分の為に時間をつくってくれる。 自分に出来ることなら、なんでもしたい。 自分からも広い背中に腕を回して、その背中を擦った。 ほんの少しの時間だったのだろうか。 長岡はゆっくりと顔を上げ、こちらを覗き込んできた。 「イチャイチャ、すっか」

ともだちにシェアしよう!