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第865話
「おかえり。
お腹減った?」
迎えてくれる母親の顔に、少しだけ肩の力が抜けた。
それに、晩ご飯の支度をしているらしく、腹の減るにおいが部屋いっぱいに満ちている。
昼ご飯を食べている時は、帰宅したらダラダラして少し寝て、それからおやつを食べようと思っていたが、今になれば頭が覚醒しているのか寝るより腹を満たしたい欲の方が強い。
「ただいま。
ちょっとね。
けど、優登のくれたチーズケーキあるし平気」
「りんご、たべる?」
「綾登が選んだんだよね。
遥登お腹空いてるかもだから、一緒におやつに食べたいって。
食べる」
「たーべーよー」
そういうことなら、遠慮なくおやつにさせてもらう。
が、その前に、手洗いうがいだ。
それに、着替えたい。
ダラダラするなら、部屋着が1番だ。
「うん。
食べようか。
綾登が選んでくれたの食べるの楽しみだな。
俺、着替えてくるから少し待っててくれるか?」
「えぇ…」
ぎゅーっと首にしがみつかれる。
そう言われて悪い気はしないが、スーツを汚すのも避けたい。
「はあく、きてね」
「分かった。
早く戻ってくるから待っててな」
鞄を手に部屋へと急ぐと、そそくさと着替えを済ませる。
いつものパーカーにボトムス。
それが、こんなにも恋しい。
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