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第925話
「あ、知佳ちゃん」
「三条くん、田上くん。
卒業、おめでとう」
「知佳ちゃんも、おめでとう。
袴可愛いね」
「ほんと?
嬉しい」
袴姿は、いかにも大学の卒業式らしく華やかだ。
髪の毛も綺麗に纏められ、花があしらわれている。
正直、成人式との違いは袴か、振袖かの違いくらいしか分からない。
だが、とても綺麗だと思う。
「一緒に写真良い?」
「うんっ。
勿論!」
知佳ちゃんが並ぶと、自分との身長差に驚いた。
こんなに小さかったか。
それとも、久し振り過ぎて忘れていたのか。
身を屈め、画角に収まるとシャッターが切られる。
知佳ちゃんのスマホでも写真を撮り、会えなかった時間を埋めるように思い出をつくる。
過ぎてしまった時間は巻き戻せない。
埋めることの出来なかった時間も返ってこない。
けど、そこでウジウジしているばかりでは、勿体ない。
どうせなら、悔いを出来るだけ小さくして卒業したいから。
「私、三条くん達がしてた、トーテムポールしてみたい」
「ははっ、知佳ちゃんかわってるね」
「しようっ」
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