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第924話
「さんじょー」
「田上っ!」
広い会場で、どこだ?とスマホを見ていると近くから手を上げる人を見付けた。
茶気ていた髪は落ち着いた色味に染められ、それがもうすぐ新生活なのを強く印象付けている。
けれど、どちらの色も似合っている。
今日は、大学の卒業式だ。
去年はこういして会場では出来なかったが、今年は様子をみながらするということで、久しぶりに多くの学生が式場となる建物に集まっている。
「三条、背ぇ高いからすぐに見付かったわ」
「ごめん、迷って…」
「いや、見付かったんだんだから気にしなくて良いだろ。
それより、決まったんだろ?
どこ?」
「秘密」
「公務員は厳しいなぁ…。
でも、おめでと」
ニッと笑う顔は高校の時と…出会った時と全くかわっていない。
だけど、すごく大人になったと思うのはなぜだろう。
「そっか。
三条の名前、新聞に載るのか。
額に入れて飾らねぇと」
「なんでだよ…」
「そりゃ、大切な友達の第1歩だろ。
大切じゃねぇか」
田上のそういうところが好きだ。
「吉田もするってよ」
「吉田も?
なんで俺省いて話してるんだよ…」
「じゃあ、三条も飾ろうぜ。
3人でお揃い」
「なんか…不思議なお揃いだな…」
でも、自分と同じように喜んでくれる友人に出会えて良かった。
その喜びを噛み締めながら、卒業式までの時間を潰す。
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