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第935話
玄関の開く音に続いて、「くつ、ある!」と可愛らしい声が聞こえてくる。
すぐにパタパタと小さな足音が聞こえる。
優登と共にそちらを見ると、ドアが開かれコートを着た綾登が顔を見せた。
「たあいま!」
「おかえり」
長男の顔を見付けると、三男の顔がキラキラした。
「みっちゃ、いーい?」
「良いよ」
綾登は少しモジモジしてから足元へとやって来た。
その手には、どら焼き。
「どーぞ」
「え?
俺にくれるの?」
「んっ!
がんばったから」
「え、嬉しい」
ぎゅーっと抱き締めると、嬉しそうな声がする。
小さくて冷たい手が頭を撫でた。
その触り方は母にそっくり。
「じゃ、半分こしよっか。
優登もだから、三分こ?」
「俺は良いよ。
折角綾登がくれたんだから、沢山食えよ」
「折角くれたから優登も食うんだろ。
な、綾登」
「なっ!」
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