984 / 984
第984話
抱き締められている三条は、猫のようにスリ…っと頬を擦り付けた。
これで社会人なんだからな。
「心からの気持ちっつぅのは、言葉に出来ねぇんだよ」
「好きとか、愛してるもですか?」
「生意気。
ケツ揉むぞ」
もう少し一緒にいたいのは山々だが、日付けもかわった。
一旦帰宅させるべきか。
粗方の荷物は運び込んだらしいが、まだ実家の方の整理もあるだろう。
最後にぎゅっと抱き締めてから、ゆっくりと身体を離していく。
名残惜しいのか三条の手は触れたままだ。
こういうところが可愛いんだ。
「今日、部屋に来るんだろ?」
「はい。
お昼前頃には行けると思います」
「なら、帰って寝るか」
「え、もう…ですか……」
ハッとした顔をしてももう遅い。
一度口から出た言葉はなかったことには出来ない。
ニヤける頬をそのまま、もう一度手を握る。
「遥登が構わねぇならもう少しデートすっか」
「…正宗さんは寝なくて大丈夫なんですか…」
「遥登が来るまで寝てるからな。
気にすんな」
「なら…」
握り返される手を引き、また歩き出す。
ともだちにシェアしよう!

