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第984話

抱き締められている三条は、猫のようにスリ…っと頬を擦り付けた。 これで社会人なんだからな。 「心からの気持ちっつぅのは、言葉に出来ねぇんだよ」 「好きとか、愛してるもですか?」 「生意気。 ケツ揉むぞ」 もう少し一緒にいたいのは山々だが、日付けもかわった。 一旦帰宅させるべきか。 粗方の荷物は運び込んだらしいが、まだ実家の方の整理もあるだろう。 最後にぎゅっと抱き締めてから、ゆっくりと身体を離していく。 名残惜しいのか三条の手は触れたままだ。 こういうところが可愛いんだ。 「今日、部屋に来るんだろ?」 「はい。 お昼前頃には行けると思います」 「なら、帰って寝るか」 「え、もう…ですか……」 ハッとした顔をしてももう遅い。 一度口から出た言葉はなかったことには出来ない。 ニヤける頬をそのまま、もう一度手を握る。 「遥登が構わねぇならもう少しデートすっか」 「…正宗さんは寝なくて大丈夫なんですか…」 「遥登が来るまで寝てるからな。 気にすんな」 「なら…」 握り返される手を引き、また歩き出す。

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