983 / 984
第983話
肉付きの悪い頬を指先で挟んでみたりするたびに、三条はふにゃふにゃ笑う。
その顔の愛おしいことと言ったらない。
この顔が見られるなら頑張れる。
原動力にもなる子だ。
「そろそろ日付けかわったか?」
自分のスマホをタップすると0時を過ぎていた。
「社会人の遥登だ」
「なにもかわりませんよ」
「同僚だろ」
土日があるから実際に働き始めるのは月曜日からだ。
それでも、もう学生じゃない。
本当に対等な立場になった。
「なんか、不思議です」
「そりゃ俺の方だ。
生徒が教師になって一緒に働くんだぞ」
細い身体にそっと腕をまわす。
細っこくて、骨張っていて、それで高い体温。
清潔なにおいがふわふわ香る。
「言葉になんねぇよ」
「国語の先生なのにですか?」
楽しそうな声だ。
きっと三条も同じ気持ちだ。
ともだちにシェアしよう!

