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第983話

肉付きの悪い頬を指先で挟んでみたりするたびに、三条はふにゃふにゃ笑う。 その顔の愛おしいことと言ったらない。 この顔が見られるなら頑張れる。 原動力にもなる子だ。 「そろそろ日付けかわったか?」 自分のスマホをタップすると0時を過ぎていた。 「社会人の遥登だ」 「なにもかわりませんよ」 「同僚だろ」 土日があるから実際に働き始めるのは月曜日からだ。 それでも、もう学生じゃない。 本当に対等な立場になった。 「なんか、不思議です」 「そりゃ俺の方だ。 生徒が教師になって一緒に働くんだぞ」 細い身体にそっと腕をまわす。 細っこくて、骨張っていて、それで高い体温。 清潔なにおいがふわふわ香る。 「言葉になんねぇよ」 「国語の先生なのにですか?」 楽しそうな声だ。 きっと三条も同じ気持ちだ。

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