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第982話

そろそろか、とスマホを取り出すとあと数分で時刻は来学期。 「大学生の遥登も見納めだ」 「なら、写真撮りませんか?」 「お、良いな」 三条は自分のスマホを掲げるとカメラに収まるように身体を寄せてきた。 あんなに小さかった頭はホトンド同じ。 旋毛が見えなくなったのはいつだったか。 「正宗さん、俺を見てどうすんですか?」 「見納め、見納め」 視線をスマホへと移し、マスクをズラす。 学校の生徒たちも大切だが、A組の…はじめてのクラスの…遥登がなにより大切だ。 今だけはそれを優先させて欲しい。 だって、たった1度きりの瞬間だから 「正宗さんだけの写真もください」 「なら、遥登だけのもくれよ」 三条のかわりにシャッターをタップする。 「あ、今の俺、間抜けな顔してませんでしたか?」 「可愛いから大丈夫だろ」 「…もう1枚お願いします」 「なら、」 手をしっかり握り、もう半歩近付いた。 「これでな」 くりっとした目がやわらかく細められる。 その瞬間、画面をタップする。 俺の1番好きな顔。 視線なんてどうでも良い。 この写真を見返した時に、今が甦ればそれが良い。

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