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第981話

「ほんと、成長期だな…」 「もう学生じゃなくなりますから」 にっこりと微笑む三条は、確かに男らしくなった。 それも相当の良い男。 見た目だけじゃなく、中身も。 恋人として、1人の人間として、安心して頼ることが出来る 「社会人の遥登も楽しみだな」 小指を絡めるとまた歩きだす。 桜はまだだが、桜並木へ。 感染症が流行してから何度も歩いた道。 だけど、三条にとってはもっと沢山歩いた道。 そこを並んで歩く。 「今年もここで桜見ような」 「良いんですか?」 「当たり前だろ。 ここの桜、綺麗だもんな」 この桜がどれだけ自分たちの気持ちを見守ってくれていたか。 悔しい思いや割り切れない気持ちを消えながらも見上げた先で、誇らしく咲いているから花の前ではそんな気持ちさえ忘れてしまう。 だからこそ、日本人は花見が好きなんだろう。 それに、隣にはふくふくと笑う愛おしい子。 好きな人と一緒に季節を見るから、また良いんだ。 「嬉しいです」 「俺も嬉しい。 遥登が頑張ってくれたお陰で来学期から最高だぞ」 「へへっ」 その顔はまだまだ子どもらしくもあるが、やっぱりあの日より大人びている。

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