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十年ぶりの組事務所
奏音は十年ぶりに菱沼組の組事務所に足を踏み入れた。
「全然変わってない。一階に菱沼金融、二階に菱沼不動産、三階に菱沼コンサルティング……昔のままですね」
「十階に紗智夫婦と亜優夫婦、組事務所の隣に真沙哉夫婦がそれぞれ住んでいる」
遥琉に案内され組事務所にまで行くと、玲士と鳥飼が笑顔で出迎えてくれた。
「根岸悠仁のことで菱沼組の皆さんご迷惑をお掛けしてすみません」
奏音は深々と頭を下げた。
「他所のシマで好き放題されれば誰だって頭にくる」
「悠仁には困ったもんだな。いちゃもんつけて店から金を脅し取ろうとしたんだ」
「七年間育ててやった報酬として五百万を払えと脅されました」
「まさに人間の面を被った鬼だな」
悠仁を見張っていた若い衆が撮影した写真に目を通す奏音。
悠仁の友人、昔の仕事仲間。見たことがある顔がもしあれば卯月さんに伝えろ、遼と龍に言われた奏音。昔のことは思い出したくもなかったが、ママの役に立ちたい。その一心で写真に目を通した。
「あれ、このひと……」
やがて奏音がひとりの男性を指差した。
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