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対決
その時だった。
「廊下でたむろすんでねぇ。ストレッチャーが通らんにぇべした」
斉木を先頭にがらがらと音を立てて、看護師たちが数台のストレッチャーを押してエレベーターから下りてきた。
「端っこさよりっせ。邪魔だごと」
信者の男たちを手でしっしと払いながら斉木は目で弓削と優に合図した。
「みんないまだ。走れ」
一斉にエレベーターへと駆け込んだ。
「逃がすか」
男のひとりが遅れをとった未知と光希を追い掛けた。その手には鋭利な小型のナイフが握り締められていた。
「ママ‼」
「逃げて‼」
「光希さんも逃げて‼」
「早く!」
子どもたちの声が病院中にこだました。
「一太戻る必要はない」
母親を助けに行こうとした一太を優が止めた。
あと少しというところで男の動きがぴたりと止まった。
「あぶねぇーモノ、振り回すな」
男の背後に病院着を着た覃と宋が気配もなくすっと立っていた。
「姐さんに報告しないといけないことがあるんだよ」
「邪魔だ。命が惜しいなら失せろ」
ドスのきいた声と、氷のように冷ややかな声に男は震え上がった。
未知と光希が無事にエレベーターに乗り込むと扉がすっと閉まった。
そして入れ違いに大挙して階段を駆け上がってきたのは病院から通報を受け駆け付けた警察だった。
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