8 / 8

第8話

俺は、高校時代の恩師に相談し、夜間高校に編入させてもらうことになった。 これは、春名の提案だった。 「別に、レイちゃんが、学校の先生になってもええんやろ?」 そう言って、春名は、躊躇している俺の背中を押してくれた。 叔父も、俺が働きながら、勉強を続けることを喜んでくれた。 「お前は、なんでも、一人で抱え込もうとして、自分のことを疎かにしすぎる。私も、心配してたんだよ」 叔父は、言った。 「これも、春名先生の影響かな?」 俺と春名は、ほぼ、同棲状態だった。晴が、俺の様子を心配してしまうぐらい、俺は、春名に夢中だった。 生まれて初めての恋だった。 「でも、その人、変態なんでしょ?ほんとに、大丈夫なの?」 晴に言われて、俺は、笑って言った。 「たぶん、大丈夫、だ」 「なら、いいけど」 晴は、最近、人気男優ランキングの一位に輝いたらしい。 新作の監督は、沢村がしているらしい。 なんでも、奴は、晴にセーラー服を着せて撮影したらしい。 彼もまた、真性の変態だ。 こうして、俺たち兄弟は、二人、別々の道を歩み出したわけだった。 俺たちは、一卵性の双子だった。 本当なら、一人の人間として生まれてくる筈だった俺たちが、こうして、分かたれたのは、きっと、運命だったのだろう。 そして、この世界にたった二人ぼっちだと思っていた俺たちが、それぞれの愛する人に出会い、異なる人生へと踏み出していくことになった。 これもまた、運命だったのだ。 俺たちは、本当の意味で、お互いの人生へと旅立っていく。 だが、いつでも、振り返れば、お互いがいるんだ。 俺たちは、たとえ、別々の人生を選んだとしても、永遠に、兄弟であることに変わりはない。 俺たちは、家族だ。 二人きりだった家族が、少し、増えただけだった。 そう、俺は、思うことにしている。 いい日ばかりじゃないだろうけど、いつだって、俺たちには、お互いがいるんだ。 もう一人の自分自身が。 そして、愛する人たちも、いる。 俺たちは、一人じゃない。 いつだって、きっと、笑っていられる。 俺たちなら。

ともだちにシェアしよう!