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後日談 第10話【終】

**  案の定、動けなくなってしまった俺のことを、啓太は甲斐甲斐しく世話をしていた。 「やっぱり動けなくなっちゃったね」  どこか嬉しそうに言うさまにちょっと膨れながら「啓ちゃんひどい」と言うと、ベッドの脇に座り「ごめんね」と囁きながら俺の頭にキスを落とす。そして柔らかく頭を撫でた。  なんとなくそれで許してしまうのも悔しい気がして、そのまま不機嫌そうにしていると啓太は目を細める。 「颯季がプロポーズの花束の打ち合わせに来たよ。亜季くんには自分で言うって言ってたから聞いたときは驚いてあげてね」 「別に驚くこともないじゃん」 「まぁ、そう言わずに。颯季もさ、亜季くんのこと好きなんだから」 「俺はそうでもないし」  拗ねたようにシーツに包まると可笑しそうに笑う啓太の声が聞こえた。 **  そして啓太言った通り後日、兄から結婚することと、それを機に家をリフォームして二世帯住宅にすることが告げられたのだが、その時に。 「リフォームの間、啓太が亜季を預かるって言ってくれてるんだ」 「え、えぇ⁉︎」 「学校もあるし、啓太の店でバイトも続けるんだろ?」 「まぁ、その予定だけど……。でも啓ちゃんに迷惑かかるんじゃ……」 「俺も最初はそう言ったんだ。でも、来年は受験だろ? あまり環境を変えない方が亜季の為なんじゃないかって啓太が言うからさ。どうしたいかは亜季が決めるといい。まぁ、父さんたちと俺は賛成してるんだけどな」  兄との話が終わるとすぐさまその話を確認しに行くと啓太は優しく笑った。 「公認で亜季くんと同棲できると思って」 「ど、同棲⁉︎」 「嫌だった?」 「嫌なんかじゃないけど、ただびっくりして」 「ほら、やっぱり驚いたでしょう?」  ふふふと笑いながら啓太は俺の頭をポンと撫でた。 「受験もあるし環境変えない方がいいって思ったのは本当だよ。バイトも続けたいうちは続けたらいいし。バイトがなくても、亜季くんにおかえりって言って欲しいな」 「う、うん。わかった」  返事をすると啓太がそっと俺の頬を撫でて抱き寄せた。 「じゃあ、僕の家に住んでくれる?」 「う、うん。……啓ちゃんの迷惑じゃないなら」  啓太は笑みをこぼすと抱き寄せる腕に力を込める。 「改めて亜季くん、これからもよろしくね」 「俺も、よろしく」  上目遣いで告げると啓太は微笑んでまた強く俺を抱きしめた。啓太がすごく嬉しそうなので俺も嬉しくなる。  好きな人とずっと一緒にいられるんだと思うとわくわくする。それに……ドキドキもする。  その瞬間、脳裏には啓太に覚えさせられた諸々の情事が浮かび、思わず顔が熱くなってしまった。   (一緒に住むってことは……やっぱ、そうなるよな)  それは一緒に住むにあたって気掛かりなことでもあった。  別にそういうことをするのが嫌なんじゃない。むしろ年頃だから好きだし興味もある。いちゃいちゃするのは嬉しいし、気持ちいいことも好きだけど、想像を超えるやつは死ぬほど恥ずかしいのだ。  だから、それだけは釘を刺しておかなければと思った。 「あのさ……」  意を決して顔を上げると、啓太は優しげな表情のまま首を傾げた。  とても恥ずかしくて言いにくいことだけど、言わなきゃ俺がもたない。 「あ、あのさ……、あの、エ……エッチするとき手加減して欲しい……」  そう告げると啓太はふふふと笑った。  すると啓太は意外にもあっさりと「大丈夫だから心配しないでね」と言ってくれたのだが、なんとなく不安が残る。 (大丈夫って……?)  啓太の大丈夫は大丈夫ではない気がしたのだが、そんな俺の目の前に啓太はタブレットを差し出した。 「亜季くん、今日のアレンジメント見る?」  啓太の笑顔は変わらずで、今日も色鮮やかなものばかりですぐに画面に釘付けになる。 「すげー、きれい」  すっかり大丈夫な意味を聞くタイミングを失ってしまったが、それに気付くことなくタブレットの中のアレンジメントに夢中になっていると啓太が俺の髪を梳いた。  ふと、顔を上げると、啓太が微笑んだ。  そして、そっとキスを落とされて……。  俺は静かに瞼を閉じた。 終

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