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長山家 2-1

そんな藤咲とのやり取りから数日。 大学院が就業し、駐輪場へ向かう途中でスマホが鳴っていること気づくと、発信源は実家の母親からだった。正直乗り気ではなかったが、『大樹さん、今日は帰ってくるのよね?』と半ば強制的の問い掛けに強く断ることなど出来ずに快諾をした。 大樹は一度自転車で自宅へと帰っては、小ぶりのハードケースを持つとマンションに迎えがくるのを待つ。母親の付き人から連絡を貰い、マンション前まで降りると「お久しぶりです。大樹様」と白髪混じりの髪型と髭だが清潔感を伺えるよう整えられた身なりに、黒いスーツの高崎(たかさき)の車の後部座席へと乗り込んだ。 最低でも月に一度実家に顔を出すことになっている。父親はツアーやらマルチのテレビの仕事やらで居ないことが多いから滅多に顔を合わせることはないが、母親は肘を壊してからヴァイオリン二ストを引退し、常に実家にいる。きっと寂しいのだろう。 そして幼い頃からお嬢様育ちの母親には当たり前のように付き人がいた。高崎の年齢は50代ぐらいだっただろうか……ヴァイオリンを引退してもなお、母親のお世話を続けている。 そんな実家へと向かう道を眺めながら大樹は深いため息をついていた。主に上層階級人達が住んでいる高級住宅地の大きな一軒家が立ち並ぶ中の一角の300平米程の自宅。 自宅前に到着して車から下ろされては、高崎が車が2台ほど入る車庫へ仕舞うのを待ち。門扉を開ける彼に続いて中へと入る、庭を抜け 玄関へと入ると、紺色のワンピースに大判のストールを肩にかけては、母親は待っていましたと言わんばかりに自分を出迎えてくれた。 高崎は「大樹様を連れてきました」と言っては、御礼をする母親に一瞥して深く頭を下げると玄関から出て行ってしまった。 高崎の家は母親が呼びつけられたら直ぐに来れるように隣だったはず。 親に援助してもらって大学院に行かせてもらっている身とはいえども、やっぱり俺にはこの実家の空気が息苦しかった。 「お久しぶりです」 大樹は母親と目が合うなりその場で会釈をした。

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