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守れるのなら.......

十二月末日、ゼミの課題やらで忙しない時間を毎日過していると、気がつけば主催パーティの当日になっていた。全課程が修了して自宅に戻ってはフォーマルな服装へと着替える。 パーティといっても何処ぞの富豪がやるようなドレスコードもあるような堅苦しいものでは無いので幾分かはマシだった。 ネクタイなしのワイシャツ、ジャケットに 畏まりすぎるわけでもなく、砕けすぎない服装で開催場所のホテルへと車で向かう。 ホテル内の地下駐車場に車を停めて、建物内の3階のパーティルームへとたどり着く。受付の名簿に名前を書いて参加費用を渡すと全く知らない顔や、業界で表立って出ているような見た事のある顔がちらほらといた。 ホテルの大ホールなだけあって誰がいるのか探すのが大変な程の人数。中には芸能関係者とかもいるんだろうか……。 立食形式のパーティで、開始十分程前だというのに、既に人は集まっていてグラスを片手に話をしている人がいる。大樹は入って数分もしないうちに、身に覚えのない中年の男性に話しかけられ、適当に話を合わせていた。しかし、話を聞いているうちに、よく実家に遊びに来ていた父親の友達だと言うことが分かる。 ほんの極たまにではあるが、幼い時、俺と顔を合わせていたことがあるらしく、下手に粗相は出来ないと常に気を張らずにいられなかった。 そうしているうちに開始時刻になり、今回の主催である|伊川龍太郎《いがわりゅうたろう》が壇上に上がり、挨拶を始めた。お洒落みのあるべっ甲色の眼鏡に綺麗に流された白髪混じりの髪。さすが、国民的な行事の楽曲も手がけているだけあって風格が違う。 乾杯の音頭をとり、挨拶が終わると各々テーブルを行き来し始めた。 明らかに自分は場違いではあるが、ここでポツンと一人でいる訳にもいかず、先程の中年男性に父親と関係が深い人たちを教えて貰い、挨拶していった。こんな所で両親の力を借りるのに抵抗はあったが、母親や父親の話をすれば名の知れた両親だからか、それなりに相手にしてくれた。 伊川先生にも挨拶へ向かわねばと思うものの周りには常に人がいて中々、入る隙がなかなか見つからない。すると、会場の扉が開かれ、藤咲が遅れて入ってくるのが見えた。

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