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恋人の発言に翻弄されても尚、心做しか耳を真っ赤にして嬉しそうな律仁。 これは完全に、律仁は渉太に貶されたくてわざとやってるのか……? 人の性癖をとやかく言う気は毛頭ないが、 長年の親友のこんな恋人に見せる姿や態度を初めてみて、見てる自分までもが恥ずかしく、むず痒さを感じた。 「……病室まできてお前らは、俺にイチャイチャを見せにきたのか?」 少し揶揄ったように言ってやると、ベッドから顔を上げては「そうだけど?」とケロッとした表情で言う律仁に対して、今度はその後ろの渉太の顔が真っ赤になる。 「そんなつもりじゃないです……律仁さん、先輩に変なこと言わないで下さい!」 「大樹なんだし、別にいいじゃん?」 恋人を見上げながら、したり顔の律仁と汗を飛ばしそうなほど慌てている渉太が見ていて面白くて大樹は声を上げて笑ってしまった。 カップルのイチャイチャなんて赤の他人だったら目を伏せたくなるが、この二人が仲良さそうにしても自然と不快には思わない。むしろ、微笑ましいのが不思議だった。 「あの…先輩、実はもう一人来てるんです」 「もう一人……?」 談笑が一段落した後、渉太が半ば切り出しにくそうな様子で俺に問いかけてきた。大樹が首を傾げていると、詳しいことを話すわけでもなく、「連れてきますね」と言って病室から出ていってしまう。 すぐ側に立っていた律仁に「誰?」と訊いてみても「まぁー、来てのお楽しみ」とはぐらかされただけで答えになっていなかった。 五分くらい経過した頃だろうか、漸く扉がスライドされて渉太だけが、此方に顔を出してくる。壁に隠れて分からないが、左横に誰かいるのだろう、急かすように手招きをしていた。 黒い影が渉太のいる位置へと近づいていく。此方に姿を見せたのは藤咲だった。もうあれ以来、藤咲も会いたくないだろう、会うことはないだろうと思っていただけに驚いた。

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