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「何処のサッカー部の話だよ」と半ば呆れながらも大樹は律仁に大人しく腕を預けることしかできず、屈みながら終始楽しそうにじっと描かれているのを眺める。
眺めていると、明らかにメッセージなんかでは無く、ネコなのかイヌなのかよく分からない生物の全貌が明らかになった。
渉太も見ていて「律仁さん……それは…」と慌てふためいていたが、律仁の絵のあまりの不格好さに笑いを堪えているようにもみえる。
暫くして「できた」と言いながら満足げに腕からペンを離す。
「有難く思え、スターの落書きだぞ」と鼻を高くして本人は満足げな表情をしているけど、特に上手くもなく、可愛いわけでもない。それ以前に何を描いたのかも分からない…。
得た体の知れない生物が描かれた包帯をずっと着けておかなきゃいけないと思うと格好悪すぎてため息が出た。
遊び心があることに関しては否定はしないが、本当に自分より年上なのかと疑いたくなる。そもそも、こいつってこんな絵心なかったっけ…。
「絵下手くそなんだな」
自身満々の律仁に水を差すように皮肉ってやると、眉をひそめて「はぁ?下手じゃねぇよ、ちゃんと分かるじゃん?」と問いかけてきたので改めて絵を吟味するが、虫のように長い四本足と長い胴体。尖った耳に死んだ魚のような目、笑顔を表現しているのか漢数字の一のような口角があがった口。
これで良く自信満々が不思議なくらい、動物なら幼稚園生の方がまだ可愛い絵をかけると思う……。
よく見たとしても、答えなど出る訳もなく、律仁が何を書いたのか全く検討もつかなかった。「ごめん、俺にはちょっと難しいわ」と考えることに降参すると、「大樹はやっぱダメだなー」と言われ、少しだけ腹が立つ。
律仁はそんな怪我人の気持ちも知らず大樹がダメなら、自分の恋人に答えを求めて振り返ると、先程くすりと笑っていた渉太の表情が真顔になっていた。
「俺も下手くそすぎて、分からないです。そもそも、それ宇宙人のペットかなんかですか?」
先程の大樹の怒りを全て消し去ってくれるほどの刀でスパッと切ったような爽快な渉太の言葉。律仁はかなりダメージを受けたのか、落ち込んではベッドの縁に突っ伏する。
「イヌなんだけど……」と拗ねたように呟く律仁の姿がどこか力なさげで、その様子を見た渉太は言いすぎたと自覚したのか、慌てて「イヌとしては変ですけど、可愛いと思えば可愛いかもしれないです」と貶しているのか助言しているのか、渉太なりの優しさを見せていた。
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