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暫くの沈黙の後、藤咲がこくりと頷くと「いい……僕も…アンタに酷いこと言ったから…………」と漸く口を開いた。
あの時は自分の気持ちを優先して先走って行動してしまったが、冷静な頭で考えたら藤咲は悪くない……。
藤咲に悪態を吐かれようが、そんな彼にさせてしまった元凶はあの日彼に頼まれたにも関わらず、約束を守れなかった自分のせい。当然の報いだった。
藤咲自身の右腕に添えられた左手がグッと力を込められる。彼も彼でこの状況が居心地悪いんだろう……。両手に嵌められた黒い手袋がまるで全てのものを拒むように主張をしてきては、酷く胸が締めけられた。
大樹は少しでも沈黙を埋めようと、ベッドサイドの引き出しから手袋を取り出す。
「藤咲…これお前のだろ」
パーティの日にホテルのゴミ箱に捨てられていた黒い手袋。どういう意図であそこに捨てられていたのかは分からない。しかし、直前まで藤咲が身に付けていたものだけに何か謝って捨てられてしまったかもしれないと思った大樹は鞄に忍ばせたまま持っていてしまっていた。
藤咲に向かって差し出してみたが、一向に受け取る気配がなく、「いらない……あいつが触ったものだから…」と首を左右に振る。
あいつが誰を指しているのか、そいつと藤咲が触れ合っていた場面を見ていただけに、大樹は「そうか、だよな…」と納得するしか出来なかった。
静かにベッドテーブルに手袋を置くと再び沈黙が現れる。大樹が次の言葉を探していると向かいから「渉太が……」と呟いた声が聞こえて、耳を研ぎ澄ました。
「渉太が……あんたは、周りをよく見ていて、誰かのためにちゃんと考えて行動してくれる、頼りになる優しい先輩だって言ってた…
でも僕は昔嘘をついて見捨てたあんたを信じられない……」
渉太が過言しすぎなくらい俺に敬意を払ってくれているのは嬉しい反面、藤咲の言葉の重みが胸に鋭く突き刺さる。
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