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事情を細かく説明してくれている渉太を遮るように隣から「渉太、謝らなくていいんだよ。大樹。そういう事だから、よろしく」と陽気な声が飛んできた。鎮火したはずの怒気が再び湧き上がってきては、大樹は思わず運転席のヘッドレストを掴み、身を寄せる。 「よろしくって.......俺は行くって言ってない。前だって渉太に断ったはずだろ」 律仁の後頭部に向かって怒りをぶつけたが、当の本人は全く動じていないようだった。 「渉太に言ったとしても俺は聞いてない。大樹が行くか行かないかに拘わらず、強制連行な。あと俺が捕まるからシートベルトして」 「相変わらず強引だな.......」 バックミラー越しにニヤニヤしているのが、物知り顔でやけに憎たらしい。明らかに渉太から俺が行かない意思でいたことは聞いているに違いないし、渉太が律仁に隠す訳が無い。 律仁の言う通り後部座席とはいえ走行中はシートベルトは必須だし、それでこそ律仁が捕まったら小言じゃ済まされない。 大樹は今世紀最大というほどの大きな溜息をつきながら背もたれをつけると、大人しく諦めてシートベルトを着用した。 降ろしてと言ったところで無駄なのは分かっているし、今どこを走っているのかも皆目検討がつかないが、自分の足で後戻りが不可能な距離な事は確かだった。ぼんやりと前方を眺めた道路標識と進行方向から横浜へと向かっている……。 幸い今日と明日は予定がないので、何処へ連れていかれようが構わなかったが、問題はそこじゃない。 横浜へと向かっているのならば、思い浮かぶ答えはひとつしか無かった。 「キャンプはいいとして、藤咲も来るのか?」 律仁が「あぁ.......もちろん」と返事をしたことで、藤咲を来ることが確定された。 これから藤咲を迎えに行くのだろう.......。 今から藤咲も加わる.......決して会いたくない訳じゃない、寧ろ気にかけている相手ではあるが、会う度に感じる気まずさは払拭された訳ではなく、微妙な距離感のまま。 藤咲は嫌じゃないんだろうか·····。 それとも俺がいないと分かっていて来たんならとんだ邪魔者だよな··········。 「先輩乗り気じゃなかったのに本当にごめんなさい.....でも、先輩も一緒だと俺、嬉しいです」 フォローするように、渉太が話しかけてきたことによって多少なりとも気持ちが救われた。それどころか、「天体観測楽しみましょうね、先輩の話聞かせてください」と瞳を輝かせて訴えてきたので渉太の温かさには、尖って汚染された醜い心も洗われるようだった。

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