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level.9

"ラブホに行きたい──" ──意外性もなんにもないに、峯は付き合った──。  建物に入るまで若干の抵抗を見せていたの峯だったが、部屋に入るや否や、博物館の扉を初めて開けた子供のように好奇心丸出しで興奮し始めた。 「わーっ、すごー、きれーっ、カラオケルームのおっきいとこみたいー!」  無駄に色が変わるLED照明を楽しそうにいじってはひとり「ほおお〜」とテンション高く感心していた。  色気の微塵もない峯を一通り自由に遊ばせてやり、十分気が済んだであろうところで「お風呂入ろう」と、桐谷が伸ばした手に大人しく従い、峯はその手を取った。  峯のワンルームマンションにはまず有り得ない、明るくて広いバスルームに大きくて長い浴槽。それにすら峯は嬉しがって広い浴槽にゆったりもたれかかり、甘い匂いがする入浴剤の泡を手に掬って遊んでいた。 「ガキんちょ」と、正面に座った桐谷に一蹴されてプーっとその頬が風船のように膨らむ。 「だってこんなの見たことないんだもん」 「風呂に時間使うなよ、勿体ない」  そう言って桐谷は峯の手を引っ張り、自分の目の前に向かい合って座り直させた。 「虎羽の、あっ、当たってるんだけど……」 「今更何言ってんの、お前は」  思い切り下半身をくっつけて、峯の固くなり始めた雄と桐谷自身のを重ねて擦り合わせると、峯の全身は早くも力が抜け落ちそうになっていた。 「だ、め……っ、虎羽……」 「滑るから、ちゃんと俺に捕まってろ」  峯は素直に桐谷の肩に両手を回して、必死にしがみつく。  ぐちゃぐちゃと大きな手で自分の中心を包まれながら、一緒に熱いモノとで強く擦られて、ビクビクと峯の腰は痙攣する。 「あっあっ……そんな強くしたら……ダメ、でちゃう……出ちゃうぅ……」  ガブリと桐谷に首筋を噛まれて、峯はあっけなく達してしまった。  峯は風呂でのぼせかけた赤い身体をベッドにだらりと伸ばし、上から重なってくる男のキスを素直に受け入れる。刺激に弱い峯は繰り返される深いキスに瞳を潤ませ、だらしくなく口から雫を垂らした。  桐谷は濡れた峯の唇を舐め上げ、耳朶や首筋を味わいうと、わざと音を立てて意地悪く胸を強く吸い上げては指で摘んで峯を泣かせる。 「いたぁい、やだぁっ、やめて……っ」 「痛いの好きだろ?」 「好きじゃないぃ!! このサイコパス! 変態! 鬼! 悪魔!」  ベチベチと桐谷の胸を叩きながら、峯は一人で小さな抗議を展開していた。 「今日も悪口雑言冴えてるねぇ〜」と桐谷は嬉しそうに笑うだけだったので、ますます峯は眉間の皺を深くした。  誤魔化すみたいに顔中にキスされて、怒った峯が顔を背けた時、突然身体の中に冷たいものが入ってきて峯は腰を浮かせて驚いた。 「なにっ、冷たっ……」  峯は後ろの孔にジェルをたっぷり注がれて、無防備に投げたままだった両脚を乱暴に開かれる。 「変態っ! やだあっ」  両膝を胸につくほど開かされ、桐谷から何もかもが丸見えになった状態で中を何度も何度もいじられては慣れた手つきで広げられてゆく。 「本当にやなの?」  焦らすみたいに桐谷は自分の張り詰めた雄を峯の濡れた孔に少しだけ当てて、上から悪い笑みを落とす。 「っ……」  触れている場所がピクピクとひくついて、桐谷自身に当たり少しだけくすぐったい。 「やめる? 挿れて欲しくないんだもんな?」 「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」  涙で潤んだ瞳が言葉なく桐谷へ訴えかけるが、桐谷はわざと気付かないふりをする。 「凛──素直に言って……どうして欲しいか」 「…………って……」 「ん?」 「だって……したら、おかしくなるのわかってるから……俺、変になって、中いっぱい擦ってほしくて、頭おかしくなるから──怖い……。嫌われる……」 「────はい?」  思わず桐谷は真顔で固まった──。  とうとう、潤んだ瞳から涙から溢れ出て、峯は本格的に泣き始めてしまった。 「ちよっ、ちょ、凛人! なんで泣くんだよ! 嫌いって何?!」 「陰キャで……変態とか……もう……人生終了だから……。虎羽、ほんとに……嫌に、な、る……から──」  自分がやらかしすぎた意地悪の皺寄せがまさかここでこんな形でやってくるとは──と、桐谷は自分自身を激しく呪った。  そして泣き出した峯の身体を強く抱きしめて、ゆっくりと頭を撫でてやる。 「嫌いなわけあるか! アホ! えっちな子こそ正義で可愛いものはこの世にないんだからな!」 「ナニソレ、意味わかんない〜〜」 ──確かに、頭の悪いことを言った。と桐谷は猛省する。 「好きな子こそいじめたくなるだろっ、けど、やりすぎました。ごめんなさいっ」 「────す、き……? 虎羽、俺を……好き、なの?」 「……そう、だけど、いけない?」 ──言ってしまった。こんな露骨にヤリ(もく)みたいな場面で言うんじゃなかった……と、今更ながら激しく後悔した桐谷だったが、もちろんすでに遅すぎた──。 ──なのに、峯は涙を浮かべた瞳を揺らしながら少しだけ唸って「良かったぁ〜」と再び号泣しはじめた。  こっちこそ自身の後悔やら目の前の泣き虫やらと、パニック状態な桐谷は、どうしてていいやらわからないまま、とりあえず懐いてくる腕の中の可愛い生き物を抱きしめた。 「虎羽は……俺なんか好きにならないって……思ってたから……えっちだけでもいいって……俺……」 「ん? ん?? んんん〜?!」 「俺──本当は少し前から虎羽のこと、好きかもって思ってて……えっちしたら余計好きになっちゃって……けど、きっと片想いだろうから……俺……」 「────それって、凛は俺が好きって……ことで合ってる?」  身体を少し離して桐谷は峯の濡れた顔を不安げに覗き込む。 「…………ばかなの?」 「悪かったな!」 「好きじゃなきゃ……こんな、こと、しない! 出来ないっ、虎羽としかしたくないよっ!」 ──当たり前のことなのに、当たり前にしてこなかった自分のせいで、ちゃんと相手のことすら見えていなかった。 「そか……凛人は、俺を好きになってくれてたんだ……そうか。そっか……」 「虎羽……」 「ん?」 「────俺、と……、つ、つき、あって……くれ……ますか?」  緊張した面持ちの峯が少し震えながら、それでも真っ直ぐに桐谷を見据え、必死に言葉を紡ぐ。 「──えっ?!」 「ええっ?!?!」  桐谷の驚いた反応に峯の顔色が赤から一気に青に染まる。 「お前から告るのぉ?! うっそー! なんだよーっ、イケメンなことすんなよぉ! ヲタ陰キャのくせにぃ!!」 「も〜〜〜っ! だったら虎羽が言えばいいじゃんか!」 「凛人大好き、彼氏になって」 「ッッッ!!!!!!」  息を止めて心臓を抑えたまま峯は桐谷の腕の中にバタリと倒れ込む。 「死、死ぬかと思った──顔面偏差値の高い男からの告白マジ怖い……」 「あっ!」 「今度は何!」 「俺、初めてだ! 誰かに告白したの!」 「────ふぅん」と峯の身体からピンク色のオーラが急に無くなり、冷気すら感じるような白く細い目で見られて、納得のいかない桐谷は憤慨する。 「そこ喜ぶところじゃねぇの??」 「ウレシイ〜すげー、ウレシイナァ……」 ──つまり、桐谷は今までずっと告白されたことしかなかったことをなぜかこんな時に白状したのだ。

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